【1月9日 AFP】日産自動車(Nissan Motor)前会長のカルロス・ゴーン(Carlos Ghosn)容疑者(64)が8日、勾留理由開示手続きのため東京地裁に出廷し、昨年11月の逮捕後初めて公の場に姿を見せた。しかし、最高経営責任者(CEO)を務める提携先の仏ルノー(Renault)の工場従業員の間では冷淡な反応が目立った。

「自分には大金が転がり込んでいるくせに、従業員の賃金は上げないんだから」。パリから北東に車で1時間ほどのフラン(Flins)にあるルノーの工場。塗装工として勤務するグウィナエル・ドジョンジ(Gwenaelle Degenge)さんはそう吐き捨て、「お金をだまし取ったっていう話が本当なら、私たちにおすそ分けしてくれてもよかったんじゃない」と皮肉った。

 ゴーン容疑者は東京地裁で、2010~14年度の報酬を有価証券報告書に約50億円過少記載していたとされる疑いなど、一連の不正疑惑はいわれのないものだと主張した。

 ゴーン容疑者の逮捕後、ルノーはCEOの代理を指名したが、ゴーン氏の会長兼CEO職は解いていない。ルノーの工場で昼休みやシフト交代の際に取材に応じた従業員たちはAFPに、CEOの運命が分かるのをただ待つしかないと口をそろえた。

 ある従業員は、フランス国旗と並んでプロサッカークラブ「パリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)」の旗が掲げられた売店に行く途中、「個人的には、ほかに気がかりなことがあるし」と語った。日産の経営に絡むゴーン容疑者の嫌疑は「同僚の中にはちょっと気にしていた人もいたけれど、私たちはしばらく笑いのネタにしただけで、あとはもう知らない」。

 50日ぶりに公の場に姿を現したゴーン容疑者は、かなり痩せたように見えた。親族の話では、逮捕後に体重は20キロ近く落ちたという。

 それでも、労働組合のフィリップ・ゴマール(Philippe Gommard)さんは「ゴーン氏が痩せたことに従業員たちはさほど動揺しないでしょう」と話す。

 ゴマールさんによると、ゴーン容疑者は従業員の間で「常に従業員により多くを求めながら、常に自分がより多くを手にしている」人物とみられているという。そうした状況や工場の労働条件などを考えれば、ゴーン容疑者がいなくなっても「寂しがったりする人は一人もいないと思う」とゴマールさんは語った。(c)AFP/Corentin DAUTREPPE