【1月21日 東方新報】長江スナメリの個体数は数年来、環境汚染や乱獲、水力発電所の建設などの人間活動の影響を受け減少してきたが、このほど、環境保護関係者は、スナメリを救う希望の光が見えてきたと語る。香港「南華早報(South China Morning Post)」が報じた。

【関連動画」 「水中の妖精」長江スナメリ

 政府の発表した数字によると、長江スナメリはわずか1012頭のみで、パンダの6割にも満たない。しかし、スナメリの数は2012年以降、個体数の下降スピードが緩やかになっていることは、保護対策が効果を上げていることを物語っているのかもしれない。

 1990年代初頭、約30〜40頭のスナメリが湖北省(Hubei)天鵝洲(Tian’ezhou)保護区に移入された。同保護区は長江が形作った三日月湖に区割りされ、現在は約80頭のスナメリが確認されている。

 王丁(Wang Ding)さん(60)は、中国科学院で長江スナメリ研究に携わる専門家だ。王さんは「スナメリは天鵝洲で生存できるだけでなく、次世代を繁殖する能力があることを確認できたことは、勇気づけられる」と話す。

 政府は保護区付近の漁民に対して職を変えるよう奨励してきた。王鶴松さん(46)は保護区の巡回保護員を務める。

 2頭のスナメリが背中を水面の上に現すと、王鶴松さんは「見てください、スナメリのママと赤ちゃんですよ」と言い船を止めた。2頭はすぐに水面下に潜った。「スナメリが呼吸のために頭を出すのは、ほんの数秒だけなのです。私たちは毎日ここを巡回し、様子を見ているのです」と王さんは言う。

 武漢市(Wuhan)にある中国科学院(Chinese Academy of Sciences)水生生物研究所では6頭の長江スナメリが飼育されており、科学研究と人工繁殖を展開しているが、一般見学も可能だ。

 ガラスの壁越しに2頭のスナメリが泳いでいるのが見える。時々、水面から顔を出し、観光客の方を見る。ボランティアの劉漢輝さんは、「我々にあいさつをしているのですよ!スナメリにはヒトの心がわかるのです」と言う。

 世界自然保護基金(WWF)によると、大人の長江スナメリの知力は3〜5歳程度の人間の子どもに等しいとされている。(c)東方新報/AFPBB News