【1月14日 AFP】モロッコ南部のサフラン農家は、紫色の花から採れる高級スパイスの生産に誇りを持ってきた。しかし、このサフラン農業が今、類似品によって脅かされているという懸念が農家の間で広がっている。

「タリウィン(Taliouine)産の純サフランは、世界一と専門家に評価されています」。地元農家の男性(51)は、栽培しているサフランが原産地呼称保護(PDO)制度の対象になっていることを挙げ、誇らしげに語った。しかし、類似品の生産がタリウィン産サフランの評判やPDOの権威を傷つけている現状について懸念を抱いている。

 タリウィンにおけるサフラン栽培は、頂上を雪に覆われたツブカル山(Mount Toubkal)の下に広がる小さな区画で何世紀もの間、ほとんど変わることなく続けられてきた。サフランの花は、暑い夏と寒くて湿度の高い冬という厳しい気候条件を満たさなければ栽培できない。また収穫できるのは、10月中旬から11月中旬までの1か月間のみだ。

 地元の25の協同組合と活動する「サフランの家(The House of Saffron)」によると、モロッコではPDOの認定を受けたサフランは1グラム当たり約3ユーロ(約380円)で販売されている。一方で「類似品は、カサブランカ(Casablanca)のデルブ・オマール(Derb Omar)の市場で1グラム当たり約1ユーロ(約126円)以下で売られている」と、サフランの家代表のイスマイル・ブクリス(Ismail Boukhriss)氏は指摘する。

 地元農家によると、類似品業者は低品質のサフランをトップクラスの品質に見せ掛けるため、化学着色料や他の植物の一部などを使用しているという。ブクリス氏は、PDO認定された農家は当局によって高い水準に保たれているが、「非公式な市場ではこのような品質の統制は行われていない」と語った。(c)AFP/Ismail Bellaouali