【12月28日 AFP】気候変動に起因する自然災害は、2018年だけで約1000億ドル(約11兆円)に上る経済的損失を世界にもたらしたと示唆する報告書を、英ロンドンの国際援助団体「クリスチャン・エイド(Christian Aid)」が27日、発表した。今年相次いだ大規模な山火事や洪水、大型の台風・ハリケーンといった災害は、温室効果ガスの排出量を削減しなければやがて訪れる未来の「暗い影」だと警告している。

 2018年の気温は記録史上4番目の高さとなる見通しで、世界の平均気温は産業革命前と比べて1度近く上がっている。大気中の二酸化炭素(CO2)やメタンなどの温室効果ガスも増える一方で、今後は異常気象がどんどん当たり前になっていくと予想される。

「2018年は、気候変動が世界に与える壊滅的な脅威があらわになった年だ。これは、気温が今後も上昇を続ければ訪れるだろう未来の暗い影にすぎない」と、クリスチャン・エイドのキャット・クラマー(Kat Kramer)氏は指摘している。

 クラマー氏のチームは、2018年に甚大な被害をもたらした十大気象災害を選出。誰でも自由に利用できるオープンデータや政府発表の推計、保険会社の査定をもとに、個々の災害の損害額を算出した。

 最も経済的損失の大きかった災害はハリケーン「フローレンス(Florence)」と「マイケル(Michael)」で、損失額はそれぞれ170億ドル(約1兆8800億円)と150億ドル(1兆6600億円)」だった。マイケルは1969年以降最大の勢力で米本土に上陸し、米国で45人、ホンジュラスとニカラグア、エルサルバドルで少なくとも計13人が犠牲になったとされる。

 これと、米カリフォルニア州で相次いだ山火事、欧州の干ばつ、日本の豪雨災害の4つは、経済的損失額がいずれも70億ドル(約7700億円)を超えた。また、2018年には人間が居住する地球上の大陸すべてで、少なくとも1回は気候変動に起因する大規模災害が発生していた。

 クリスチャン・エイドはこれらの推計について、損失補償額のみを参照し店舗や家屋の被害に基づく生産性の損失を考慮に入れていないケースがあるため、ほとんどの災害で実際の損害額はもっと膨らむだろうと指摘している。

「唯一の対策は、国際社会が直ちに温室効果ガスの排出量を削減し、世界のCO2排出量と削減量を同量に保つカーボンニュートラルを今世紀半ばまでに実現するため尽力することだ」とクラマー氏はAFPに語った。(c)AFP/Patrick GALEY