■「銃には銃を」

 ブラジル人は、銃を所有するという考えに固執し続けてきた。2005年に実施された銃規制をめぐる国民投票では、銃器の販売を禁止する法案に投票者の64%が反対した。

 現状では、ブラジルで銃所有の要件すべてを満たせる可能性のある最も簡単な方法の一つは、競技射撃の資格を取得することだ。この場合は連邦警察ではなく軍の管轄下となり、護身のために武器が必要であることを証明する必要はない。ブラジル・CBNラジオによると、競技射撃の資格の年間取得件数は、過去2年間で倍以上に増えたという。

 バロッソさんが紙製の的を狙ってショットガンを撃つ練習をしている射撃場「コルト45(Colt 45)」の経営者によると、会員数はこの3年間で激増し、125人から1350人と10倍以上になった。

 この射撃場では、入会希望者のためにすべての行政手続きを3000レアル(約8万5000円)で代行している。この金額に税金および必須の射撃試験と心理判定の費用が追加される。

 同射撃場は、ボルソナロ氏への支持をはっきり表明しており、窓には次期大統領を支持するステッカーも張られている。インストラクターのジョアン・ベルクレ(Joao Bercle)さんは、次期大統領が「銃購入を希望する人々のために状況を改善してくれる」ことを望んでいる。「現状では犯罪者たちは、殺傷能力の高いライフルや戦闘用武器を含む密輸品に簡単にアクセスできる。公平さが必要だ」

 銃がもっと普及すれば犯罪者も思いとどまる、というのがベルクレさんの持論だ。「目の前の人物が武装していると思えば、強盗だってもっと慎重になるだろう。今は皆が銃を持っていないことが明らかだから、強盗は平気で銃を突きつけるんだ」

 しかし弁護士のバロッソさんは、銃の一般化には同意できない。「街中にいる皆が銃を持ち、誰かが脅かされたと感じるたびに撃ち合いが起きていたら、まるで西部劇になってしまう」「私だったら携帯電話を盗もうとした相手に対して、銃を取り出すことは決してしない。たかが電話のために、的を外して無実の人を撃ってしまうようなことが恐ろしいからだ。市民には警察の仕事はできない」 (c)AFP/Louis GENOT