■手作業の極み

 ボルダロ・ピニェイロはさらに高みを目指しているが、伝統的な手作業へのこだわりは今も変わらない。「ボルダロはこれからも大きな工房であり続けるだろう。私たちはほぼすべての製品を手作りすることで、自分たちの歴史に敬意を払いたい」と、製造部門長のチアゴ・メンデス(Tiago Mendes)氏は言う。

 年内には国外で初めて、仏パリとスペイン・マドリードにブティックをオープンする。現在、製品のうち輸出向けが占めている割合は半分だが、これを4分の3にまで高めたい考えだ。

「わが社ではブランドと製品の品質に大きな価値を置いている。創業者でもあった芸術家、ラファエル・ボルダロ・ピニェイロ(Raphael Bordallo Pinheiro)のアイデアに従った製品をこれからも作っていく」と同社のヌノ・バラ(Nuno Barra)氏は述べる。

 ボルダロ・ピニェイロは著名なジャーナリストであり、風刺画家であり、陶芸家だった。温泉を訪れてカルダスダライーニャに魅せられ、ここで起業した。「彼は自分の創造的な才能を表現する方法として、陶磁器の魔術のとりこになったのです」と、芸術ディレクターのエルザ・レベロ(Elsa Rebelo)氏は言う。


 家族や家屋の象徴としてポルトガルの多くの家に飾られている陶器のツバメ、「アンドリーニャ」を生み出したのもボルダロ・ピニェイロだし、新聞や雑誌で人気を博した反体制的な庶民キャラクター「ゼー・ポビーニョ(Ze Povinho)」の生みの親も彼だ。

 同社が傾いたとき、ポルトガルの一流アーティストの一人、ジョアナ・バスコンセロス(Joana Vasconcelos)氏が助け舟を出していくつかの発注を行い、自らの作品の中でボルダロ・ピニェイロ製の陶磁器を使った。その後、彼女は同社のゲストデザイナーとして、若くトレンドに敏感な層を引き付けている。(c)AFP/Thomas CABRAL