【12月19日 AFP】南アフリカの広告規制委員会は18日、冒険を求めて旅に出た黒人部族の王子が大陸を発見し「ヨーロッパ」と名付ける内容のファストフードチェーンのテレビコマーシャルについて、植民地化を題材に笑いを誘うのは不適切だとして放送を禁止した。

 ファストフードチェーン「チキン・リッキン(Chicken Licken)」のテレビコマーシャルは、1650年に黒人男性が南アフリカを出発し、冒険に満ちた航海の末、上陸した土地で三角帽をかぶりチョッキを着た現地の白人に出会うというもの。

 コマーシャルの中で、上陸した黒人男性は「やあ、白い皆さん。俺はこの土地が気に入ったなあ。ここをヨーロッパと呼ぶことにするよ」と言って持っていたやりを自分の足元に突き刺す。

 広告規制委員会は、このコマーシャルが「多くの南アフリカ人を苦しめている問題を商業目的に矮小(わいしょう)化した」と判断。「植民地化の話を通常とは逆にしたことで、いくばくかのユーモアがあると感じられるかもしれないが、アフリカ大陸とアフリカ人が経験した現実の植民地化の歴史は苦痛に満ちている」「植民地化の遺産というのは繊細で対立を生む題材であり、ユーモラスな表現に利用すべきではない」との見解を示した。

 さらに植民地化によってアフリカ人は自発的に自国を去ったのではなく、移送中は非人道的な環境に置かれて飢え死にするケースも多かったと指摘した。

 チキン・リッキンは、このコマーシャルは同社のハンバーガー「ビッグ・ジョン(Big John)」にまつわる伝説という体裁を取った「おふざけ」だと説明。「植民地化の困難な歴史をあざ笑う意図は全く、いかなる形でもなかった」と釈明し、南アフリカ人の自尊心と愛国心を強めようと企画されたものだったと付け加えた。(c)AFP