【12月17日 AFP】ハチを病気から守るワクチンの開発に、フィンランドのヘルシンキ大学(University of Helsinki)の研究チームが成功した。世界初の成果とみられ、ハチの個体数急減に歯止めをかける対策として期待されている。

 世界の全農作物の4分の3はハチなどの生物の媒介で受粉するが、近年、ハチが一斉に姿を消したり大量死したりする「蜂群崩壊症候群」という現象が報告されるようになった。ハチ個体数の減少が世界的な食料危機を引き起こす恐れがあるとして、問題視されている。

「蜂群崩壊症候群」の原因としては、ダニや殺虫剤、ウイルス、菌類、またはこれらの組み合わせなどが指摘されているが、詳細は分かっていない。

 ヘルシンキ大チームが開発したワクチンは、コロニーを全滅させかねない病原微生物への抵抗力をハチに与えるもの。チームを率いるダリアル・フライターク(Dalial Freitak)氏は、「このワクチンでハチのコロニーのほんの一部だけでも救うことができれば、私たちの研究が社会に貢献し世界を少しばかり救ったと言えるだろう」とAFPに述べている。

 人間や動物の場合、抗体が病気予防に重要な機能を果たす。だが、昆虫には抗体がないため、ワクチン接種によって免疫をつけるのは不可能だとこれまで考えられていた。

 昆虫学と免疫学を専門とするフライターク氏は2014年、ある特定のバクテリアを餌とするガでは、幼虫に免疫が移行することを発見。ミツバチと卵黄たんぱく質ビテロゲニンについて研究しているヘリ・サルメラ(Heli Salmela)氏と共同で、世界で最もまん延し大きな被害を出しているハチの伝染病「アメリカ腐蛆(ふそ)病」のワクチンを開発した。

 角砂糖を用いて女王バチにワクチンを投与すると、免疫が幼虫に受け継がれ、コロニー全体に広がっていく仕組みだ。

 研究チームでは、その他のハチの病気に対するワクチンの開発を進めつつ、アメリカ腐蛆病のワクチンを商品化する資金調達に乗り出した。フライターク氏によれば、反応はこれまでのところ「非常に前向き」だという。(c)AFP/Sam KINGSLEY