【12月14日 AFP】マラリアを引き起こすマラリア原虫を肝臓の中で殺傷する方法についての研究が進められている。国際研究チームがこのほど研究論文を発表した。この分野の研究はこれまでほとんど行われていなかった。

 米カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部(University of California, San Diego School of Medicine)のエリザベス・ウィンゼラー(Elizabeth Winzeler)教授(薬理学・創薬学)は、AFPの取材に「肝臓の段階においてマラリア原虫を対象とする研究に取り組むのは非常に難しい」と話し、「われわれは長年、マラリアを治す薬を探究してきた」と続けた。

 米科学誌サイエンス(Science)に発表された今回の研究では、蚊の体内にいるマラリア原虫を取り出すために蚊数十万匹の解剖が行われ、試験管内に単離したマラリア原虫を、さまざまな種類の化合物で処理する実験を計50万回実施した。その結果、特定の分子にマラリア原虫を殺傷する能力があることが分った。

 約6年に及ぶ研究の末、「化学的予防薬(ワクチン)」の候補分子631個が特定された。通常のワクチンは体が抗体を作るのを可能にする。

 米国を拠点とする国際NGO「PATH」の「マラリアと顧みられない熱帯病(NTDs)」プログラムを主導するラリー・スルツカー(Larry Slutsker)氏は、「1日に1回投与すれば人体内の肝臓と血流の両方に存在するすべてのマラリア原虫を殺傷し、効果が3~6か月間持続するような薬を見つけることができたらどうだろう。そうなれば最高だと思われるが、そのような薬は現時点では存在しない」と指摘する。

 ここで極めて重要になるのは、服薬数を減らすことだ。

 スイスの非営利団体「メディシンズ・フォー・マラリア・ベンチャー(MMV)」のダビッド・レディ(David Reddy)最高経営責任者(CEO)は、現在使用可能な薬の多くが3日間にわたって服用する必要があることを指摘する。しかし実際には、初回の薬を服用後に子どもの具合が良くなり始めて熱も下がるため、多くの親は残りの2回分の薬を他の子どもが発病する場合に備えて取っておくのだという。

 この場合、二つの影響があるとレディ氏は説明する。「一つは薬を1回しか服用しなかった子どもが完全には治癒しないこと、もう一つは薬剤耐性が形成されることだ」