【12月14日 AFP】ラグビーニュージーランド代表のスティーブ・ハンセン(Steve Hansen)ヘッドコーチ(HC)が13日、チームには「新たな思考」が必要であるとして、来年のW杯日本大会(Rugby World Cup 2019)を最後に退任することを表明した。

 ハンセンHCは、世界王者オールブラックス(All Blacks、ニュージーランド代表の愛称)の指揮官を退く理由について、「W杯終了後に新しい人材を投入し、フレッシュな視点や思考を取り入れることがチームのためになると考えている」と報道陣に説明した。

 前任のグレアム・ヘンリー(Graham Henry)氏の下で7年間アシスタントコーチを務めた後、ハンセンHCは2011年末から母国代表の指揮官に就任し、2015年のW杯イングランド大会(Rugby World Cup 2015)でオールブラックスを優勝に導いた。チームは同指揮官の下で世界ランク1位に君臨し続けており、これまでその座を一度も明け渡したことがない。

 オールブラックスを率いてテストマッチ通算85勝8敗3分を記録し、勝率は90パーセントに迫る素晴らしい成績を残しているハンセンHCについて、ニュージーランドラグビー協会(NZR)のブラント・インペイ(Brent Impey)会長は、「彼の記録を超えることは不可能だ。スティーブの次のキャリアに何が起ころうと、ニュージーランドラグビー界におけるレジェンドとしての彼の地位は揺るぎない」と称賛した。

 ハンセンHCの退任により後任争いが勃発するものとみられており、その筆頭候補として同指揮官のアシスタントコーチを務めているイアン・フォスター(Ian Foster)氏や、現在アイルランド代表を率いているジョー・シュミット(Joe Schmidt)HCの名前が挙がっている。

 自身の後継者について聞かれた際に、ハンセンHCは「私個人の見解はあるがプロセスの手助けになるとは思えないので、自分の心の中だけにとどめておくつもりだ」とコメント。しかしながら、フォスター氏に関して「素晴らしいヘッドコーチになるだろう。彼はコーチとしても人としても成長している。申し分ない資質があり、ラグビーに対する理解力も素晴らしい」と口を滑らせる場面があった。

 これまでの在任期間中、ハンセンHCは才能を見抜く鋭い洞察力を発揮してきた上に、絶え間なく進歩を目指す精神をチームに吹き込んできた。その努力が実ってオールブラックスは2015年以降、リッチー・マッコウ(Richie McCaw)氏を筆頭に、ダン・カーター(Dan Carter)、マア・ノヌ(Ma'a Nonu)、コンラッド・スミス(Conrad Smith)ら名選手がこぞって代表から退きながらもその影響はほとんどなく、目覚ましい結果を残し続けている。

 当初はW杯を前に2017年に指揮官を退く意向を示していたハンセンHCだったが、NZRが慰留して2019年まで契約を延長していた。しかし、今回は自身の決意を譲らずに退任が決定。「次のこと? それは分からないから、聞いて困らせないでくれ」と話すと、オールブラックスをW杯3連覇に導くことが最優先だと付け加えた。

 オールブラックスの一員として自身5度目のW杯参戦となるハンセンHCは、母国代表指揮官として最後の任務に立ちはだかる壁にも高揚感を抱いており、「競争の観点からすると、最も厳しいW杯になるだろう」「北半球のチームは前回大会から力をつけてきて、かなり調子が良い。オーストラリアや南アフリカは本来の実力を発揮できれば、優勝できると考えている」と述べた。(c)AFP