【12月11日 AFP】米国オリンピック委員会(USOC)は10日、同国体操連盟(USA Gymnastics)の性的虐待スキャンダルに関する調査報告書で、元チーム医師のラリー・ナサール(Larry Nassar)被告が数百人の女子選手に暴行することを許す環境づくりを手助けをしてしまったとして、自らの組織を糾弾した。

 大規模な調査でまとめられた223ページに及ぶ報告書では、USOCの幹部が2015年にナサール被告をめぐる疑惑が最初に浮上した際に迅速に動かず、2016年にスキャンダルとして噴出するまで問題を隠蔽(いんぺい)していたと記されていた。

 USOCの依頼で調査を行ったボストンの法律事務所ロープス&グレー(Ropes & Gray)は、元最高経営責任者(CEO)のスコット・ブラックマン(Scott Blackmun)氏とアラン・アシュリー(Alan Ashley)強化本部長の2人が、最初に疑惑が報告されてから対応を怠っていたと指摘。ナサール被告のアスリート虐待を許したのは、こうした組織的怠慢だったという厳しい指摘を受けて、現CEOのサラ・ハーシュランド(Sarah Hirshland)氏は、アシュリー強化本部長の解任を決定した。

 ナサール被告は今年、2012年ロンドン五輪と2016年リオデジャネイロ五輪の体操団体で金メダルを獲得した米代表チームのメンバーを含め、250人以上のアスリートを虐待していたとして終身刑を言い渡された。

 報告書では、「数十年にわたり少女や女子選手を虐待した最終的な責任はナサール被告にあるが、秘密裏にやったことではなかった」「その代わりに、犯行に都合の良い環境で行動に移していた」とされている。

 その上でUSOCと連盟のコーチ陣、トレーナー、そして医療スタッフの全員が、ナサール被告からアスリートを守ることに失敗したと結論づけ、「これらの組織と関係者は警告を無視し、用意周到に行われた振る舞いや悪事を把握することに失敗し、ナサール被告の虐待を受けていた少女や若い女性からの助けを求める声を見過ごした」と指摘。

 ナサール被告による虐待は「若手アスリートの安全を確保するための適切なポリシーや措置を講じて、子どもたちを保護することに連盟とUSOCが失敗したことを明確に示すもの」であると強調した。

 報告書の内容を受けて、USOCの独立委員会のメンバーであるスザンヌ・ライオンズ(Susanne Lyons)氏は、ナサール被告の被害者に対し、「USOCは被害者をはじめ、そのご家族を失望させてしまいました。被害に遭われた皆さんにもう一度謝ります」と謝罪した。「この独立調査を行ったのは、どうしてこのようなことが起きたのかを突きとめ、虐待の防止と把握に努めるための重要なステップを踏むためです。これによって、私たちは個人や組織の失態に関して、もっと包括的な見方ができるようになっています」(c)AFP