【12月11日 AFP】英国のテリーザ・メイ(Theresa May)首相が10日、欧州連合(EU)と合意した離脱(ブレグジット、Brexit)協定案の議会採決延期を発表した。メイ首相は同案についてEU側と再協議する意向だが、離脱の行方は一段と不透明になってきた。今後ありそうなシナリオをいくつか挙げる。

■合意の微修正

 メイ首相は、13~14日にブリュッセルで開かれるEU首脳会議(サミット)に先立ち、議員の懸念事項について話し合うためEUの首脳らに会いに行くと確約した。英国のEU離脱後も北アイルランドの国境管理厳格化を避けるための「バックストップ(安全策)」と呼ばれる措置について、「一層の保証」を引き出したい考えだ。

 だがバックストップに対しては批判も多く、離脱派は協定案を下院で採決にかける前に全面的に見直すよう要求している。

 EU側はというと、バックストップについては一切再交渉に応じないと明言している。

 EU関係筋は、可能なのは離脱後の英・EU関係の大枠を示す政治宣言の微修正くらいだろうと話す。政治宣言は離脱協定に付随する文書で、法的な強制力は持たない。

■ノルウェー型の「残留」

 英下院では離脱をめぐって議員の議論が激しくなる中、より柔軟な離脱を目指す「プランB」を推す声が強まる可能性もある。EU非加盟国がEU単一市場にアクセスできる欧州経済領域(EEA)には残る「ノルウェー型」などだ。

 英国がEEAに残るにはEU市民が英国に移動できる自由を維持する必要がある。メイ首相ら離脱支持派にとっては受け入れがたいかもしれないが、下院では従来案よりも支持が得られやすいとみられ、過半数の支持で可決される可能性もある。

 とはいえ、その場合も、英国が引き続きEU側に巨額の分担金を支払う必要がある点には国民の抵抗があるに違いない。この負担は非常に不人気だからだ。

 EU離脱の手続きなどを定めたリスボン条約(Lisbon Treaty、EU基本条約)第50条について、EU側は英国が2回目の国民投票を実施した場合などに備えて修正の可能性を協議中とも伝えられている。