【12月7日 AFP】中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ、Huawei)の孟晩舟(Meng Wanzhou)最高財務責任者(CFO)が5日、米当局の要請により、カナダ・バンクーバーで逮捕された。今回の逮捕劇で垣間見えるのは、長年の懸案事項となっているサイバースパイ活動をめぐり、米政府が中国IT企業に対する強硬姿勢をいっそう強めようとしていることだ。

 米当局が身柄引き渡しを求めている孟容疑者は、ファーウェイ創業者の任正非(Ren Zhengfei)最高経営責任者(CEO)の娘。任氏は中国人民解放軍の技術者だった経歴を持つ。在カナダ中国大使館は、「孟氏は米国の法律もカナダの法律も犯していない」と猛反発する声明を発表した。

 今回の逮捕で、貿易戦争や中国による産業スパイ、サイバースパイ活動をめぐり負荷がかかっていた米中関係の緊張はさらにエスカレートすると予想される。

 米インディアナ大学(Indiana University)法学部教授で、米シンクタンク「外交問題評議会(Council on Foreign Relations」)のデビッド・フィドラー(David Fidler)氏(サイバーセキュリティー問題担当)は、「今回の逮捕は、米国から中国へ向けた挑発だと思う」と語り、孟CFOに対する容疑は対イラン制裁違反に関連するものだが、「中国側はこれをもっと広範な経済に関わるものとして捉えるだろう」と続けた。

 フィドラー氏はまた、貿易摩擦の激化は「両国双方にマイナスな」結果をもたらし、米IT企業が中国国内で活動しにくくなる措置を中国側が打ち出す可能性さえあると言う。

 米国は今年成立した連邦法で、ファーウェイと同じく中国の通信機器大手・中興通訊(ZTE)製の機器の軍事部門および政府機関での使用を、安全保障上の懸念を理由に禁止している。また米規制当局は現在、第5世代(5G)通信網へのファーウェイの参入を禁止する措置法も施行しようとしている。