【12月5日 AFP】米航空宇宙局(NASA)の元宇宙飛行士メイ・ジェミソン(Mae Jemison)氏は4日、ポーランドで開催されている国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)で、地球温暖化対策への取り組みには、気候変動がもたらす脅威について世界が「現実を直視」することが不可欠と訴えた。

 宇宙飛行を行った初のアフリカ系米国人女性であるジェミソン氏は、COP24の200近い国・地域の代表らに対して「これまでに人類が直面した中で最大の難問」に取り組むよう「宇宙的な視点」から呼び掛けた。「地球を救えという言葉は間違っている。これは地球を救うということではなく、地球上の生命体を支えられなくなるほどの大きなダメージを、人類が地球に及ぼし続けないようにすることだ」

 国連サミットを通じて世界の国々は、3年前に仏パリ(Paris)で結ばれた地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」を履行するためのルール作りで合意を形成する必要がある。パリ協定は、世界の気温上昇幅を産業革命以前と比べて2度未満に、可能であれば1.5度未満に抑えることを目標としている。

 目指すところは明白だ。国連傘下の独立した気候専門機関によると、化石燃料の炭素排出量を2030年までに半分に削減しなければ、パリ協定の目標が達成される望みはないとされている。

 2015年のパリ協定締結以降も上昇を続けてきた現在の炭素排出量レベルでは、人類はこれまで知られている生命を様変わりさせるほどの気温上昇への進路をたどることになると、専門家らは警告する。

 だが、気候変動の裏にある政治問題は複雑だ。COP24に参加する各国代表団は、炭素排出量が増大している大規模排出国の中国から、海面上昇に脅かされている小さな島国まで、あらゆる国が受け入れられるような形で合意を形成する必要がある。

 ジェミソン氏はこの日の演説で、1992年にスペースシャトルに搭乗した自身の経験を引き合いに出しながら、人類にとって唯一の故郷である地球の未来のために、政治的論争は後回しにするよう求めた。「窓の外を見ると、この驚くべき青い惑星が見えたことを覚えている。そこに見えるこの閃光(せんこう)の薄い層は、地球の大気だった」

 各代表団に対し同氏は、「地球は人類を必要としないが、人類には地球が必要だ」と述べ、これが「初めての現実直視となる」と指摘。そして「私個人としては火星に行きたいところだが、それは地球の文明や生物種にとって次善の策ではない。われわれはこのことを理解する必要がある」と続けた。(c)AFP