【12月4日 AFP】インターネットで知り合ったシリア人男性と結婚するため中東へ渡った後、シリアで誘拐されたアルゼンチン人女性が1日、2年に及ぶ苦難の末にやっと帰国できることとなった。シリア反体制派が明らかにした。

 歴史教師のナンシー・ロクサーナ・パパ(Nancy Roxana Papa)さん(54)は、オンライン上で3年前に出会ったシリア人男性から結婚を申し込まれ、受諾。この男性の招きに応じて2016年、トルコに渡航した。

 トルコのホテルで会った相手の男性は、シリアに住む両親にあいさつに行こうとパパさんを誘った。パパさんは同年、トルコからシリアに不法入国したが、国境を越えてすぐのところで待ち受けていたギャングに拉致されてしまった。ギャングはパパさんの娘に身代金を要求したという。

 1年後、パパさんは拘束されていた場所から逃げ出すことに成功。内戦下のシリアを転々と、地元住民たちの家に泊めてもらいながら生き延びたとされる。

 反体制派の過激派組織「タハリール・アルシャーム機構(HTS)」(元アルヌスラ戦線)が拠点とするシリア北部イドリブ(Idlib)県に立ち上げた「救済政府(Salvation Government )」は、法的な手続きが完了し、パパさんが1日にトルコ側に戻ったことを明らかにした。

「救済政府」の担当者によると、パパさんの身柄は既に10月30日にシリアの対トルコ国境にあるバブ・アル・ハワ(Bab al-Hawa)検問所でトルコの非政府組織(NGO)「人道支援基金(IHH)」に引き渡されていたものの、本国帰還のための法律・行政上の手続きに1か月かかったという。

 パパさんは身柄引き渡しの際に国境でHTSが開いた記者会見で、アルゼンチン大使館、トルコ当局、「救済政府」に感謝の意を表明。「あなた方は私の人生を救ってくれた」と涙ながらに語っていた。

「救済政府」は今年に入ってパパさんの件でアルゼンチン外務省に連絡を取ろうとしていたが、失敗に終わり、IHHが対応を引き受けたことで帰国が実現する運びとなったという。

 映像は、記者会見に出席したパパさん。バブ・アル・ハワで10月30日撮影。(c)AFP