【12月2日 AFP】近絶滅種に指定されているヨーロッパウナギ(学名:Anguilla anguilla)が、毎年欧州から密輸され、中国や日本の食卓に上っている。その額は数千億円以上に達しており、自然保護活動家からは「野生動物に対する地上最大の危機だ」との声が上がっている。

 ヨーロッパウナギの資源量は、過去30年間で90%減少した。生育や繁殖に必要な湿地や河川の開発が原因だが、巨額の利益を目当てに犯罪集団の密輸が横行しているため、事態はさらに悪化していると、専門家らは懸念を示している。

 自然保護活動家が警鐘を鳴らしてはいるものの、ウナギの漁獲量は、違法か否かにかかわらず、毎年数百トンに達している。欧州連合(EU)で最もウナギの漁獲量が多いフランスでは、政治問題にまで発展している。

 ウナギの保存活動を行っている「サステイナブル・イール・グループ(SEG)」のアンドリュー・カー(Andrew Kerr)代表は、「生息地の減少と欧州内の移動経路を人間が開発したことが原因で、ウナギの資源量は30年前に比べ10分の1程度になってしまった」とAFPに語った。

 数が激減したことを受け、各国政府や法執行機関も対策に乗り出している。ヨーロッパウナギは現在、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES、ワシントン条約)」に掲載されており、国ごとの漁獲量が厳格に定められている。

 フランスの生物多様性局漁業規制部門の責任者ミシェル・ビグノー(Michel Vignaud)氏は、「ウナギをEU圏外に輸出することは法律で禁止されている」と指摘した。アジアでは高値で取引されており、需要も高いと言う。

 国連食糧農業機関(FAO)によると、2016年の中国のウナギ漁獲・生産量は、25万トンに迫る勢いだった。これは、日本を大幅に上回る量だ。

 欧州警察機関(Europol、ユーロポール)は、毎年100トンもの稚魚(透明な体をしているため「ガラスウナギ」と呼ばれている)がEU圏外に密輸されていると推定している。これは、約3億5000万匹に相当する。

 警察や自然保護活動家らによると、合法か否かにかかわらず、ウナギは主に欧州西部で生きたまま捕獲される。その後、ワゴン車や大型トラックで、絶滅危惧種ではない別の魚と偽って欧州東部に密輸される。

 その後、稚魚は1袋に最大5万匹に分けて入れられ、密輸業者はこれをいくつかのスーツケースに分散し、民間航空機でアジアまで運ぶ。アジアでは成魚になるまで特殊な養殖場で育てられ、1匹当たり約10ユーロ(約1290円)で出荷される。

 カー氏は「価格が変動しているため概算でしか分からないが、数十億ユーロ(数千億円)に上る。地球上で最も高額な野生生物犯罪だ」「地球上で最も密輸が盛んで、最も長距離を移動している生物だ」と述べた。