■「危険で、無責任」

 今回の研究は、中国の科学者や研究機関の強い非難にさらされている。賀氏が勤務する南方科技大は26日、声明を発表し、賀氏の研究が「学問的な倫理と規範に著しく反する」と指摘。また、賀氏は2月から無給休暇を取っており、「今回の研究活動は賀教授が学外で実施した」と述べた。

 中国の科学者100人からなるグループは共同声明で今回の研究を非難し、国家による規制の強化を呼び掛けた。

 英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)のジョイス・ハーパー(Joyce Harper)教授(遺伝学・ヒト発生学)は「HIVへの耐性のためのヒト胚のゲノム編集に関する今日の発表は時期尚早であり、危険で、無責任だ」としている。

■不正行為の歴史

 ヒトDNAの編集は大きな議論を呼んでいる問題で、米国の実験室内研究でしか許可されていない。米研究チームは昨年、潜伏性ウイルス感染を排除する目的で子ブタの遺伝情報を編集することに成功したと発表した。

 中国の研究者らがヒト胚編集技術を用いて実験を行ったのは今回が初めてではない。昨年9月、中国・中山大学(Sun Yat-sen University)のチームが、ヒト胚にある病原性遺伝子変異を修正するように適合させた遺伝子編集技術を使用した。

 また、中国の学界内には、昨年起きたスキャンダルなどの不正行為の歴史がある。昨年のスキャンダルは「不正が認められた」学術論文100本の撤回につながった。

 AFPは賀氏にコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。香港の会議の主催者にも問い合わせを行ったが、やはり回答は得られておらず、主催者側が賀氏の研究を把握しているかどうかは不明だ。

 国際会議のウェブサイトに掲載されている録画動画では、議長を務める生物学者のデービッド・ボルティモア(David Baltimore)氏が「われわれは人類の遺伝子の改変につながることは何も行っておらず、世代を超えて伝わり続ける影響が生じることは何も行っていない」と述べている。(c)AFP/Helen ROXBURGH