【12月22日 東方新報】江西省(Jiangxi)南昌市(Nanchang)腫瘤医院の近くの路上に、老夫婦が開く「貸し厨房(ちゅうぼう)」がある。ここで食事を作るのは、同医院でがんの治療を受ける患者の家族らが多い。貸し厨房の経営者は、万佐成(Wan Zuocheng)さん(65)と妻の熊庚香(Xiong Gengxiang)さん(63)。

 夫婦は2003年、腫瘤医院近くの石泉村(Shiquan)で朝食の露店を開き、油条(Youtiao、油で揚げた細長いパン)、麻圓(Mayuan、油で揚げたあん入り餅)などの軽食を売るようになった。近くの病院の患者の家族らも時折この露店に来る。ある時、同医院で治療を受ける患者の家族から、店のコンロを使って食べ物を作らせてもらえないかと聞かれ、夫婦はすぐに了承した。「初めの頃は、ここを借りて食事を作る人は2人だけだったが、ここで調理ができると病院内で噂が広がったのか、コンロを借りに来る人はどんどん増えていったんです」と万さんは言う。

 人が増えたので、万さんはコンロを増やした。初めは4〜5台だったのが、今や20台くらいまで増え、狭い路地に多い時では200人くらいがこの貸し厨房で料理をするようになったのだ。

 初めのうちは、夫婦は一切お金を受け取らなかった。しかし、人が増えるにつれ、石炭コンロのほか水、調理道具などに金が出ていくので、支出を補うために、おかず1品につき1元(約16円)を頂くこととした。自分の好きな料理を自分で作ることができ、安価なこともあって、この路地は「抗がん厨房」や「愛心厨房」の名前で人々に知られるところとなっていった。

 熊さんは「厨房のコストは1日当たり300〜400元(約4890~6520円)程度。使用料を頂ければ、毎日の収入は支出とほぼ同額となるので、利益は出ないが損にもならない」と話す。