■施しは断ることができない

 ガイドラインでは、「仏教の教えをいつでも伝えられるようにしておく」ために、健康には気を付ける必要があると僧侶らに呼び掛けているが、信者のお布施を断わることは微妙な問題だ。

「ブッダの教えによると、信者が施すものは何であれ、受け取らなければならないとされている。断ることはできないし、否定することもできない」と、バンコク市内にあるサンウェート(Sungvej)寺の僧侶で、ガイドラインの作成に協力したラーチャウォンムニーさんは話す。

 ラーチャウォンムニーさんは、健康に関する教育を通じて状況に何らかの変化が現れることを期待している。ここで言う指導には、健康診断受診の勧めなどが含まれている。

 ガイドラインは、タイの地方部で小規模で行われていた活動が基になっている。

 東北部ノンカイ(Nongkhai)県にあるポーチャイ(Phochai)寺の僧侶、パーワナー・タンマコーシット(Bhavana Dhamakosit)さんによると、寺では肥満と高血圧の問題が多く見られたため、僧侶たちは3年前から健康診断を受けているという。ただ、僧侶は寺を転々とするため、実際に病院や歯医者で健康診断を受ける数は多くない。

 また、ガイドラインでは信者に健康的な食事を施すよう勧めているが、僧侶たちは信者にプレッシャーをかけすぎることには慎重だ。これについてパーワナーさんは、「特定の食事を食べないよう僧侶に呼び掛ける方がより効果的だ」と指摘する。

 僧侶向けのガイドラインは強制ではない。それでも効果が見られ始めた僧侶も出てきている。

 今年初めに体重を記録し始めてから、これまでに約30キロの減量に成功したというピピットさん。「村人からもらう食事を以前よりも選ぶようになった」と問題との向き合い方についてコメントした。(c)AFP/ Joe FREEMAN and Anusak KONGLANG