【11月21日 AFP】英国の覆面ストリートアーティスト、バンクシー(Banksy)の個展「A Visual Protest」が21日、イタリア・ミラノ(Milan)のミラノ文化博物館(Museum of Cultures in Milan)で始まった。

 キュレーターのジャンニ・メルクーリオ(Gianni Mercurio)氏によると、「公立の美術館でバンクシーの展示会が開催されるのは初めて」「英ブリストル(Bristol)でも開催されたことはあるが、一度限りのパフォーマンスだった」という。

 今回の個展は、バンクシーの許可を得ずに行われている。メルクーリオ氏は20日、AFPの取材に対し、「(展示会の準備は)非常に難しかった。まるで幽霊と働いているようだった」と語った。同氏によると、「学術寄りのアプローチ」をしているという。

 バンクシーは1990年代初めから活動しているが、ブリストル(Bristol)出身の英国人であること以外、その正体は分かっていない。「バンクシーの成功や人気は主に、覆面アーティストだという事実に基づいている。一方で、彼の悪評もその匿名性から来ている」とメルクーリオ氏は語った。

「メディアで注目を集める人としてではなく、どのようなアーティストなのかということを知ってもらいたい。今やバンクシーは神話となり、作品は二次的なものとなってしまった」

■物語を紡ぐリアリスト

 個展には、これまでで最大の規模となる約80点の絵画、彫刻、版画、バンクシーがデザインした60枚のレコードとCDのカバーが集められた。この中には、「Love is in the Air」などの主要作品や、有名なネズミの作品も含まれている。

 バンクシーは、有名なイメージの要素を抽出・変更し、イメージそのものの意味を変えてしまうことでも知られている。例えば、ピュリツァー賞(Pulitzer Prize)を受賞した米写真家ジョー・ローゼンタール(Joe Rosenthal)が撮った硫黄島に米国国旗を立てる兵士の写真は、ハーレムで襲った車の上に立ち旗を掲げる若者に、ウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)元英首相はパンクの姿に変えられた。

「バンクシーの核にあるのはメッセージ性で、日常生活の要素や一般の人を使い、物語を紡ぐリアリストだ」とメルクーリオ氏は言う。「バンクシーは忘れ去られていたストリートアートの反抗的な面、政治的な面を復活させた。それが最大の功績だ」

 4月14日まで開催。(c)AFP/ Céline CORNU