【11月21日 AFP】英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)をめぐり、ここへきて新たな問題が浮上している。英政府が閣議で承認した離脱協定案での英領ジブラルタル(Gibraltar)の扱いについて、同地の領有権を主張するスペインが異議を唱えたためだ。協定案は25日のEU臨時首脳会議で署名が計画されているが、スペインはジブラルタルに関する規定が修正されない限り、拒否する構えをみせている。

「ジブラルタルの将来を英国とEUの協議に委ねることなど、国として想像もできない」。スペインのペドロ・サンチェス(Pedro Sanchez)首相は20日、首都マドリードで開かれた財界首脳との会議で強調した。「(ジブラルタルの取り扱いに関して)変更がなければ、残念だが、スペインのような親EU政府はブレグジットに反対せざるを得ない」

 リベリア半島南端のジブラルタルは面積約6平方キロで、住民は約3万人。1713年以来、英国が支配しているが、スペインもかねて領有権を主張。周囲のアンダルシア(Andalusia)地方からスペイン人が働きにきている。ブレグジットの賛否を問う2016年の国民投票では住民の大多数がEU残留に投票した。

 離脱協定案でスペインが問題にしているのは、EUと英国は合意された目標を達成するために「各法令を誠実に、十分に尊重して、最善の努力をする」と定めた条文(184条)だ。英国側は、リスボン条約(Lisbon Treaty、EU基本条約)で「英国のEU離脱後、EUと英国の間の非合意は、スペイン王国と英国の間の合意なしにジブラルタルに適用される」(50条)と明記されていることなどから、協定でジブラルタルについてもカバーされているという立場。

 これに対してスペイン側は、同条には「あいまいさ」(ジョセップ・ボレルJosep Borrell外相)があると主張。それを取り除いて、EUとジブラルタルの将来の関係について事実上の拒否権をスペインに認めるよう求めている。

■地元ではスペインに批判

 スペイン政府は、英国側から譲歩を引き出そうという戦略のようだ。ジブラルタルのファビアン・ピカルド(Fabian Picardo)自治政府首相は「スペイン政府が土壇場で問題を持ち出すのは驚きではない」とした上で「拒否権や除外といった文言は過去のものであり、今の欧州に居場所はない」と切り捨てる。

 ブリュッセルでは離脱協定と、それと平行して出される将来の英・EU関係についての政治宣言の取りまとめ作業があわただしく行われている。協定案は英内閣とEUの政策執行機関である欧州委員会(European Commission)によって承認されており、25日の署名に向けた準備はほぼ整っているとみられる。

 テリーザ・メイ(Theresa May)英首相は英国とEUとの将来の貿易関係についての概要を取りまとめるべく、21日にブリュッセルを訪れて、欧州委員会のジャンクロード・ユンケル(Jean-Claude Juncker)委員長と会談する予定となっている。(c)AFP/Toni CERDÀ