■「今の状況は間違っていると言える指導者が必要」

 インドネシアでは同性愛は合法であるにもかかわらず、警察は昨年、反ポルノ法違反などを理由に少なくとも300人の性的少数者を逮捕した。

「法執行機関による憎悪に基づく職権乱用を、多くの人が通常の措置と見なしている現状は憂慮すべきだ」と、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)インドネシア支部のウスマン・ハミド(Usman Hamid)事務局長は警鐘を鳴らす。

 HRWによると、LGBTコミュニティーに対する一連の弾圧は、2016年にモハマド・ナシール(Mohamad Nasir)高等教育相が、大学でのLGBTの学生団体の活動を禁じたことに端を発する。以来、警察はLGBTの人々を摘発するため、ナイトクラブ、サウナ、ヘアサロン、ホテル、一般住宅にまで踏み込んで捜査を行ってきた。

 当局は批判に動じない。西スマトラ(West Sumatra)州のナスルル・アビット(Nasrul Abit)副知事は、「LGBT(行為)は非常に有害であり、われわれはそれを撲滅するよう不断の努力を行っている」と主張している。

 インドネシア議会は、同性愛も含めた婚外性交渉を犯罪と見なす法案を検討しており、保健省は、同性愛を精神疾患に分類する医療指針の導入計画を発表した。

 当局は、ソーシャルメディアも標的にしている。先ごろ、LGBTコミュニティーのフェイスブック(Facebook)ページにリンクを張ったとして、男性2人が逮捕された。米グーグル(Google)は今年1月、インドネシア政府の要求に応じて自社のインドネシア版オンラインストアから、世界最大の同性愛者向けデートアプリを削除した。

 ジョコ大統領はじめ、再選を目指す政界の有力者が、インドネシア社会で忌み嫌われている性的少数者を擁護する見込みは薄いと、HRWのアンドレアス・ハルソノ(Andreas Harsono)氏は語る。「これは間違っていると言う勇気を持つ指導者をわれわれは必要としている」(c)AFP/Kiki Siregar