【11月16日 AFP】チャンピオン、名声、富を夢見て、タイの伝統的な格闘技ムエタイの試合で戦っている子どもたち──。その数は数千人に上るともみられているが、このほど、チャリティーマッチに出場した13歳のムエタイ選手が死亡したことを受け、子どものうちから試合に出ることの是非についてタイ国内で議論が高まっている。

 数百年の歴史があるとされるムエタイは、膝、拳、肘など体の部位8か所を使って相手と戦う格闘技だ。タイでは事実上の国技となっており、ムエタイに誇りを持つ人も多い。

 タイの軍事政権は現在、スポーツ関連法規の見直しを行っている最中で、改正案では12歳未満の子どもの接触型スポーツへの出場を禁止する項目を盛り込む予定だ。

 ムエタイのチャリティー試合で死亡したのは、13歳のアヌチャー・ターサコー(Anucha Tasako)選手。試合は10日、バンコク近郊サムットプラカーン(Samut Prakan)で行われた。

 試合の対戦相手もほぼ同年代の選手だった。アヌチャー選手は、頭を数回連打されてそのまま倒れ、その後脳内出血で死亡した。

 検討中の改正案について、タイのプラウィット・ウォンスワン(Prawit Wongsuwan)副首相は、12~15歳の子どもには親の同意を求めることと「安全具」の着用を義務付けるよう、スポーツ省に指示した。

 ムエタイの世界では、子どものころから試合に出るのはごく普通のことだ。亡くなったアヌチャー選手は8歳から試合に出ており、地元メディアによると、これまでに170試合以上の出場経験があったという。

 アヌチャー選手は、イサーン(Isaan)と呼ばれる東北部のカラシン(Kalasin)県出身で、両親が別れた後は、ムエタイジムを経営する親戚の家で過ごしていた。これがきっかけとなり、ムエタイに魅せられたアヌチャー選手は、首都バンコクに移り、そこでムエタイの練習に日々励んでいた。