【11月15日 AFP】相次ぐ危機に見舞われ、各方面からの突き上げを回避しながら、英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット、Brexit)に向けての難しいかじ取りを迫られてきたテリーザ・メイ(Theresa May)英首相。これまで、数々の不利な条件を克服しながら政権をどうにか維持してきたが、彼女のレガシーは、依然として予断を許さない状況だ。

 昨年、メイ首相の呼び掛けで実施された解散総選挙で、与党・保守党が議席の過半数を割り込む悲惨な結果に終わって以来、同氏の周囲には不穏な空気が漂っている。

 聖職者の娘であるメイ氏は、鋼のように強い意志と政治的な冷酷さを示し、そして与党内の混乱をも利用して脅威となり得る人物を遠ざけながら、離脱条件の概要について自ら交渉を担えるよう、その手腕を発揮してきた。

 14日の内閣承認に続き、議会でも承認が得られれば、メイ氏に対する与野党からの批判の多くが誤りだったことが証明される。

 また交渉がまとまれば、メイ氏の権力は与党全体に及ぶようになり、保守党党首として次の総選挙に臨む道が開かれる可能性もある。これは、数週間前には考えられなかったことだ。

 だが、草案の内容を精査した議員らからの支持を取り付けるまでには、まだ多くの落とし穴が彼女を待ち受けているだろう。とりわけ離脱派は、主権をめぐって英国が妥協することには神経をとがらせている。

 ロンドン大学経済政治学院(LSE)のイアン・ベッグ(Iain Begg)教授(政治学)は閣議に先立ち、「もしすべてが悪い方向に向かったら、メイ氏は保守党の分裂をもたらした人物として長きにわたり記憶されるだろう」との見方を示していた。(c)AFP/Ouerdya AIT ABDELMALEK / James PHEBY