【11月15日 AFP】米議会超党派の委員会は14日、米国の国家安全保障戦略と米軍は危機に直面しており、ロシアか中国と戦争になれば敗北する恐れがあると警告する報告書を発表した。

 民主党と共和党の議会指導部経験者12人でつくる「国家防衛戦略委員会(National Defense Strategy Commission)」は、米連邦議会の委託でドナルド・トランプ(Donald Trump)政権の「国家防衛戦略(NDS)」を調査していた。

 トランプ政権は、ロシアや中国との「大国間の競争」を最優先課題と位置付けた新時代のNDSを打ち出している。

 しかし報告書は、米軍の予算が削減され軍事的優位性が縮小しつつある一方で、中国やロシアのような独裁体制下にある国は、「米国の強みを無効化しようと」もくろんで軍備増強を推し進めていると指摘。「米国の軍事的優位性は、米国の国際的な影響力と国家安全保障をハードパワーの側面から支えるものだが、危険なレベルにまで損なわれている」と警鐘を鳴らした。

 報告書は、今世紀に入ってから米国が「対テロ作戦」に注力してきたことが、ミサイル防衛やサイバー戦、宇宙戦、対地戦、対潜水艦戦といった戦闘分野における優位性を損なう結果になっていることを確認したと主張。「仮想敵国、特に中国やロシアに対する軍事作戦の立案・実行に必要な技能の多くが、衰え退化している」と分析している。

 その上で、共和・民主両党による「政治の機能不全や政治的決定」、とりわけ2011年予算管理法を厳しく非難。「こうした傾向が集中したことで、米国家安全保障上の危機が生まれた」との見方を示した。

 報告書は、アジアと欧州で米国は影響力を着実に失っており、軍事バランスは「明らかに不利」な方向にシフトして紛争のリスクを高める結果につながっていると指摘。「次の紛争で、米軍は容認しがたいほど多くの犠牲者を出し、主要な資本的資産を失いかねない」とした上で、「中国かロシアと戦争になれば、米国は辛勝することになるか、もしかすると敗北するかもしれない。特に、二正面作戦や多正面作戦を強いられた場合、圧倒されてしまう恐れが高い」と警告している。(c)AFP