【11月14日 AFP】米航空宇宙局(NASA)は13日、米ワシントンで会見し、今後25年以内に火星の有人探査が可能だとする見解を発表した。ただし課題は山積みだという。

 NASAは25年以内に宇宙飛行士が火星に降り立つことができるとしているが、技術的・医学的な課題は無数にある。有害な宇宙放射線や失明の可能性、骨萎縮などは、科学者らが克服すべきそうした問題のほんの一部にすぎないという。

 NASAの元宇宙飛行士で、2001年の引退までにスペースシャトルのミッションに4回参加したトム・ジョーンズ(Tom Jones)氏は報道陣に対し「現在の予算か、それよりもやや多い予算であれば、これらの課題の解決に約25年はかかるだろう」「幾つかの鍵となる技術に今すぐ取り掛る必要がある」と述べた。

 地球から平均で約2億2500万キロ離れている火星は、人類初の月への有人宇宙飛行を成し遂げたアポロ(Apollo)計画が直面した諸問題よりも桁違いに多くの科学的問題を提起している。

 現在のロケット技術では、火星に到達するまでに最大9か月かかり、宇宙飛行士にとってそれだけの長期間、無重力下で体を浮かせた状態でいることは身体的負担が非常に大きい。

 例えば科学者らは、長期間にわたる無重力状態は網膜血管に回復不可能な変化を引き起こし、これが視力低下につながる恐れがあると懸念する。さらに無重力状態でしばらく過ごすと、骨からカルシウムが浸出して骨量が減少する。

 重力が地球の3分の1しかない火星での任務の期間は1年と想定されているが、科学者らはその影響についてまだ把握できていない。

 人体への負担を減らす一つの方法は、火星への飛行時間を大幅に短縮させることだ。

 ジョーンズ氏は、飛行しながら発電するという付加的な利点がある原子力推進システムに言及し、「今から始めれば、長期間の飛行から身を守ってくれる技術を25年以内に獲得できるかもしれない」と述べた。

 さらに現状では飛行時間が長いため、宇宙飛行士はたった1度火星に行くだけで、人が被ばくしても安全とされる一生分の放射線量をその間に浴びることになる。ジョーンズ氏は「(放射線を)遮断するという点、飛行中に体験する宇宙線や太陽フレアから身を守るという点においては、まだ解決策が見つかっていない」と述べた。(c)AFP/Thomas WATKINS