【11月13日 AFP】バングラデシュに逃れたミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャ(Rohingya)の帰還開始が週内に予定される中、ロヒンギャが難民キャンプから逃亡する事態が相次いでいる。帰還は本人の意思に基づいて行うものとされているが、難民コミュニティーのリーダーらの話によると、強制送還されるのではないかと恐れているという。

 バングラデシュ南東部コックスバザール(Cox's Bazar)の国境地帯では、自らの意思に基づく帰還計画の下、第1陣のロヒンギャ難民約2260人が15日からキャンプを出発する予定となっている。

 しかし難民コミュニティーのリーダー役らは12日、この計画によって難民の間に動揺が生じ、第1陣として帰還することになっていた家族の中に逃げ出す人たちが出ていると明らかにした。

「ジャムトリ(Jamtoli)」難民キャンプのヌール・イスラム(Nur Islam)氏は、「当局は帰還対象者の名簿に載っている人たちに繰り返し帰国を勧めた。だが、彼らはそれにおびえ、別のキャンプに逃げた」と話す。

 同氏によると、帰還計画によってロヒンギャ難民の間に「とても大きな混乱と恐怖」が広がったといい、公民権などの権利が保障されない限り、ミャンマー西部ラカイン(Rakhine)州に戻りたくないと考えている人が多いという。

 AFPは、週内に出発が予定されている難民の3家族に話を聞くことができた。

 コックスバザールの難民キャンプに住む男性は「私たちは動揺している。出発が近づくにつれて緊張が高まっている」と説明。強制的に帰国させられないよう、家族と共にコックスバザールにある別のロヒンギャ向け仮設キャンプに逃げると語った。

 あるバングラデシュ当局者は匿名を条件に、ロヒンギャ難民は帰国に向けた「心の準備」ができていないと認め、「帰国して激しい苦痛を再び味わうくらいなら、(バングラデシュの)キャンプのこの場所で死ぬほうがましだという人が多い」と述べた。

 仏教徒が多数を占めるミャンマーでは昨年8月、軍がラカイン州でロヒンギャに対する厳しい取り締まりを実施。ロヒンギャは殺人、レイプ、拷問といった迫害に遭い、72万人余りが国外に避難した。国連(UN)は軍の行動を民族浄化と呼んでいる。(c)AFP/Sam JAHAN