【11月11日 AFP】旧チェコスロバキア出身の作家で、約40年前に当時の共産党政権によって国籍を剥奪されたミラン・クンデラ(Milan Kundera)氏(89)について、チェコのアンドレイ・バビシュ(Andrej Babis)首相は10日、同氏の国籍の復活を提案したと述べた。

 1987年に英俳優ダニエル・デイ・ルイス(Daniel Day-Lewis)さん主演で映画化された「存在の耐えられない軽さ(The Unbearable Lightness of Being)」などで著名なクンデラ氏は、母国での出版を禁止されたため、1975年にベラ(Vera)夫人と共にフランスに亡命。1979年、旧ソ連の影響下にあったチェコスロバキアの共産党政権から国籍を剥奪された。

 同年に出版された同氏の小説「笑いと忘却の書(The Book of Laughter and Forgetting)」では、そうした政治体制下で市民がどう生きるのかを探求している。

 バビシュ首相は第1次世界大戦(World War I)の終結100周年の記念行事に出席するために訪れている仏パリで、公営のチェコ通信(CTK)に対して「クンデラ氏は再び(チェコ)国籍を得るに値する」と語った。

 1929年に旧チェコスロバキアのブルノ(Brno)で生まれたクンデラ氏と母国との関係は、1989年に首都プラハ(Prague)で起きた「ビロード革命(Velvet Revolution)」によって共産党の一党独裁体制が崩壊した後も複雑なままだった。

 バビシュ首相によると、クンデラ氏は1989年以降、何度かチェコへの帰国を果たしているが、公の場に姿を見せることを拒んできた。同氏が最後にチェコを訪れたのは22年前だという。(c)AFP