【11月10日 AFP】オーストリアのセバスティアン・クルツ(Sebastian Kurz)首相は9日の記者会見で、数十年にわたりロシアのスパイとして活動した容疑で退役陸軍大佐(70)の捜査を開始したと表明した。欧州連合(EU)加盟各国では、ロシア政府によるスパイ活動が相次ぎ指摘されている。

 クルツ首相によると、この退役大佐は1990年代から今年まで、ロシア情報機関に機密情報を提供していた疑いが持たれている。

 オーストリアのマリオ・クナセク(Mario Kunasek)国防・スポーツ相によると、この事案は「数週間前」に欧州の情報機関から提供された情報で明らかになった。退役大佐は取り調べに対し、ロシアは「兵器システムや、オーストリアにおける近年の移民の状況」に関心を示していたと話しているという。

 現地の報道によると、この退役大佐は報酬として30万ユーロ(約3900万円)を受け取っていた。

 オーストリアは北大西洋条約機構(NATO)に加盟せず、中立国であることを重視している。そのため、英国で今年3月、ロシア人元スパイのセルゲイ・スクリパリ(Sergei Skripal)氏と娘ユリア(Yulia Skripal)さんに対する神経剤襲撃事件が起きた後も、欧州諸国としては例外的にロシア外交官を国外退去処分にしなかった。

 オーストリアとロシアの関係をめぐっては、オーストリアの極右政党・自由党(FPOe)が昨年12月に連立政権に加わって以降、疑念が強まっている。

 FPOeは2016年、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)ロシア大統領の与党「統一ロシア(United Russia)」と「協力協定」を締結しており、西側諸国の情報機関がロシア政府への情報流出を恐れ、オーストリアとの情報共有に慎重姿勢を強めているとの報道もある。(c)AFP