【11月18日 AFP】一般的にオペラ歌手はふくよかだと思われがちだ。「太った女性が歌うまで、幕は閉じない(勝負はこれからの意味)」という慣用句まで存在している。だが、著名ソプラノ歌手リゼット・オロペーサ(Lisette Oropesa)さん(35)によると近年、女性オペラ歌手に対して痩せるよう求める演出家らからの圧力が強まっているという。

 オロペーサさんは、世界の一流オペラハウスから引く手あまたの人気歌手だ。2005年には95キロあった体重も、今は56キロにまで落ちているという。仏パリでAFPのインタビューに応じ「そう簡単ではなかった」と振り返った。

 キューバ系米国人の彼女は、ニューオーリンズ(New Orleans)の学校に通っていた頃から、「太っている」とからかわれ続け、つらい思いをしていた。

 歌手になるとすぐ、自身の体重が役を得る上で問題となっていることを知った。「チャンスが欲しければ、体重を何とかしなければならない」──オロペーサさんは、ソプラノ歌手となったばかりの頃に、ニューヨークのメトロポリタン・オペラ・ハウス(Metropolitan Opera House)の関係者にそう言われたことを明らかにした。

 ソプラノ歌手に痩せるよう求める背景には、ある理由が存在しているとオロペーサさんは言う。

 現代の演出では、「機敏な動きが求められる。オペラ歌手は踊ったり、跳ねたり、体を持ち上げられたりすることもある」ため、「女性の応募者が1000人いた場合、最初に落とされるのは太った子だ」と説明した。

 だが、男性歌手へのこのような圧力はない。

 劇的な減量をしたオペラ歌手で、最も有名なのは、伝説的ソプラノ歌手マリア・カラス(Maria Callas)さんだ。1951年にある興行主から「恐ろしいほど太っている」と言われ、91キロあった体重を最終的に36キロ減らした。

 それとは対照的に、最近85歳で亡くなったスペイン人の世界的ソプラノ歌手モンセラート・カバリエ(Montserrat Caballe)さんは、最後まで「ふくよかな曲線のソプラノ歌手」でい続けた。