【11月8日 AFP】米国で6日に行われた中間選挙は、民主党が下院で過半数を獲得し多数派を奪還した。これにより、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領は納税記録の開示からロシアとのつながりまで、自身を対象とした調査の集中砲火を浴びることになる。

 来年1月からの新議会では、全ての下院委員会のトップが共和党から民主党に替わり、民主党は聴聞会の議題設定や証人召喚の権限を手にする。トランプ政権の高官らを対象とした召喚状の発行も可能だ。

 一方、トランプ氏は共和党が下院で過半数を割り込んだことで、大統領就任からの2年間に政治面での成功に必須だった「盾」の大半を失う。だが、トランプ氏は中間選挙から一夜明けた7日朝、「もしも民主党が国税を浪費して、下院でわれわれを調査しようと考えているならば、同様にわれわれも、あらゆる機密情報の漏えいやその他もろもろについて彼ら(民主党)を調査することを、上院で検討せざるを得ない。受けて立ってやろうじゃないか!」とツイッター(Twitter)で息巻いた。

■鍵を握る下院司法委員会

 既にホワイトハウス(White House)はロバート・モラー(Robert Mueller)特別検察官が進める米大統領選へのロシア介入疑惑の捜査対象となっているが、民主党が調査権を行使すれば政権運営は行き詰まり、トランプ氏が提出する予算教書も阻止される恐れがある。

 だがトランプ氏は7日、ジェフ・セッションズ(Jeff Sessions)司法長官を更迭。これにより、モラー氏の捜査は存続の危機にさらされている。

 セッションズ氏の解任について、下院司法委員会(House Judiciary Committee)の委員長に就任予定の民主党ジェリー・ナドラー(Jerry Nadler)議員は「直ちに調査する必要がある」と述べ、調査が開始されない場合は来年1月に民主党が多数派の下院でこの問題を優先事項として取り上げる意向を示し、トランプ氏をけん制した。

■「脱税」「法の乱用」から「不倫」まで

 ニュースサイト「アクシオス(Axios)」は、民主党が下院で多数派となった場合に予測される調査を共和党がまとめた一覧リストを、中間選挙前に入手。これによると、リストには「大富豪トランプ氏の納税記録」「トランプ氏と家族が公職にありながら不法に利益を得ていた疑惑」「過去に不倫関係にあったと主張する女性にトランプ氏が口止め料を支払っていた疑惑」「トランプ政権の閣僚が私用に資金を流用していた疑惑」「トランプ氏によるジェームズ・コミー(James Comey)連邦捜査局(FBI)長官の解任」「イスラム教徒を標的にした入国制限における法の乱用疑惑」「ホワイトハウスの機密情報アクセス権限問題」などが、調査が予測される項目として挙げられている。

 既に民主党は、これまでの2年間に共和党に繰り返し拒否され続けてきた大量の文書提出命令や召喚状の洗い出しを行っており、20件ほどについての調査がまもなく開始されるとの予想もある。

 トランプ氏が長年にわたって脱税していたとの疑惑についても、下院歳入委員会が召喚状を送付するとみられる。

(c)AFP/Paul HANDLEY