【11月8日 AFP】フランス南部の港湾都市マルセイユ(Marseille)で老朽化したビル2棟が倒壊した事故で、新たに1人の遺体が7日、見つかった。確認された犠牲者は合わせて6人になった。倒壊した建物には貧しい人々が多く住んでおり、構造上の危険を指摘する警告を当局が無視したと、近隣住民から怒りの声が上がっている。

 事故は5日、労働者層が多く住む地区ノアイユ(Noailles)で起きた。ビルは数秒のうちに崩壊し、最大8人が建物の下敷きになった恐れがある。

 隣接する3棟目のビルの一部も同日夜に崩落。狭い路地に立ち並ぶ複数の建物にも倒壊の恐れがあることから、消防当局の指示で近隣住民105人が一斉に避難した。救助活動中の消防隊員によると、坂になった路地では「全ての建物が互いに寄りかかっている」ような状態だという。

 マルセイユの検察当局のグザビエ・タラブー(Xavier Tarabeux)検事は7日、記者会見で、倒壊した建物に住んでいた女性から事故の前夜に「自室のひび割れの一つが広がっている」と訴える電話が消防当局にあったことを明らかにした。ただ、この女性はその後再び電話をかけてきて、「来る必要はない」と伝えたという。

 その上でタラブー検事は、現時点では倒壊の原因に言及するのは時期尚早だとの見方を示した。同検事によると、7日までに遺体で見つかったのは男性4人と女性2人。

 避難した近隣住民の一部は7日、消防当局に付き添われて所持品を取りに自宅に戻った。

 倒壊したビル2棟を数か月前に撮影したとされる米地図サービス「グーグルマップ(Google Maps)」の画像では、建物の正面に大きな亀裂が入っているのが確認できる。1棟は既に空きビルで、市当局によると住民が残っていた1棟は10月18日に専門家が調査に入り、補強工事をしていたという。

 一方、近隣住民は建物に構造上の危険があることは広く知られていたが、市当局はほとんど対応してくれなかったと主張。現場付近に集まった住民や支援者らの間には怒りの声が広がっており、マルセイユ市長や市住宅当局の責任者を「人殺し」と非難する人も出ている。(c)AFP/Estelle EMONET, Julie Pacorel