【11月10日 AFP】路面電車の運転や農作業から、工場の製造ライン労働まで──第1次世界大戦(World War I)は、社会における女性の役割を根本から変えた。戦場に行った男性に代わり、それまで男性の領域とされていた仕事に女性が足を踏み入れたのだ。

 欧州各地で、従来は「男性」の仕事とされていた給仕、郵便配達、男子校の教師、金銭を扱う銀行員などの職を、女性が引き受けることになった。

 歴史学者マイケル・ハワード(Michael Howard)氏は、「女性は看護や福祉の仕事だけではなく、オフィスや工場、農業において、急速に欠かせない存在となった。その過程の中で、社会のバランス全体が変わった」と指摘する。

 1914年に第1次大戦が勃発するとすぐ、当時のフランスのルネ・ビビアニ(Rene Viviani)首相は女性たちに「戦場で戦う男性の代わりに仕事をする」よう呼び掛けた。

 ドイツのバイエルン(Bavarian)州では1916年までに農場の44%を女性が運営するようになった。歴史学者ベンヤミン・ツィーマン(Benjamin Ziemann)氏によると、徴用された馬の代わりに女性が荷車を引くこともあったという。

 1915年以降、戦時態勢に突入した欧州内の産業は、大幅に女性の労働力に頼るようになった。1917年からは米国も同様の状況になった。

 1918年、フランスの軍需工場で働く女性は労働者全体の4分の1に当たる約40万人に上り、11時間に及ぶ過酷なシフトで約2500個の砲弾を扱っていた。

 英国では1917年末までに女性労働者の割合が50%増加し、1918年には軍需工場で働く女性の数が100万人に達したが、その多くは中流階級出身の既婚女性で、それまで家から出て働いたことがなかった。

 だが、1918年に第1次世界大戦が終結し、男性が戻ってくると、大部分の職種は再び男性が占めるようになった。

 一方、女性の社会進出によって促されたと広く考えられているのは、女性参政権の確立だ。1918年11月には英国とドイツで、1920年には米国で女性の参政権が認められた。