【11月3日 AFP】(写真追加)インド西部マハラシュトラ(Maharashtra)で2日、2年間に13人を殺害した雌の「人食いトラ」が駆除隊によって射殺された。だが、ハンターらが違法な手段でトラを殺していた疑惑が浮上し、物議を醸している。

 ここ数十年では同国で最大級の注目を集めた駆除作戦の標的となったのは、ハンターたちの間では「T1」、野生動物保護活動家らの間では「アブニ(Avni)」と呼ばれていた雌のトラ。T1は生後10か月の赤ちゃんトラ2匹の母親でもあった。

 T1の犠牲者は2016年以降、13人に上るとみられることから、インドの著名ハンターら150人超で構成された駆除隊が、パラグライダーや赤外線カメラなどを駆使して、数か月にわたる捜索を展開。ゾウの背にまたがった狙撃手らも投入され、今月2日の夜にT1を射殺した。

 だが、同州ヤバトマル(Yavatmal)県の森林で、T1が鎮静剤の投与なしに射殺されたとメディアが報じると、すぐさま疑問の声が上がった。今年9月にインド最高裁がT1の駆除命令を発した際、殺処分は鎮静剤の投与が失敗した場合に限るとしていたためだ。

 インド主要紙「タイムズ・オブ・インディア(Times of India)」などによると、T1は鎮静剤の使用が認められていない夜間に殺されたという。

 森林保護局の幹部は地元紙インディアン・エクスプレス(Indian Express)に対し、職員が午後11時ごろ、鎮静剤の矢をT1に撃ち込むことに何とか成功したと説明。だがT1が駆除隊に襲いかかり、自己防衛のために射殺せざるを得なかったとし、「1発で死んだ」と話した。

 ただ、タイムズ・オブ・インディアは、駆除に携わった情報筋の話として、トラを殺した後に矢が死骸に撃ち込まれたように見えたと伝えている。

 T1の死骸は調査のため、ナグプール(Nagpur)の動物園に移送された。

 その一方、パンダーカワーダ(Pandharkawda)の町周辺で暮らす住民らは、T1の死に胸をなで下ろしている。T1による最初の犠牲者は2016年6月に綿畑で遺体が発見された女性で、以降は主に男性の牧畜業者が犠牲となっていたという。

 インドでは大規模なトラの繁殖計画が実行に移され、2014年に実施された最新の調査によると、一時は1500頭以下にまで減少した個体数が2200頭超に増加した。

 だが、12億5000万人もの人口を抱える同国では、都市圏が徐々に野生動物の生息域に食い込む形となっている。(c)AFP