【11月3日 AFP】サッカーに関する内部告発サイト「フットボール・リークス(Football Leaks)」は2日、欧州サッカー連盟(UEFA)がフランス・リーグ1のパリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)とイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・シティ(Manchester City)に対し、ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)の規定をくぐり抜ける手助けをしていたとする調査報告を発表した。

 報告書によると、メディアコンソーシアムの「ヨーロピアン・インベスティゲーティブ・コラボレーションズ(EIC)」に加盟する「80人のジャーナリストが8か月以上」をかけて「7000万枚以上の書類」を分析した結果、UEFAがミシェル・プラティニ(Michel Platini)前会長とジャンニ・インファンティーノ(Gianni Infantino)前事務局長の主導の下、「政治的な理由」で両クラブの規定違反を認識しながら隠蔽(いんぺい)する手助けをしていたとされている。

 カタールの億万長者が所有するPSGとアブダビの投資グループがオーナーであるシティは、FFPに違反しながらも欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)から除外されるという最も厳しい制裁を免れていた疑惑が持たれている。

 フットボール・リークスによると、PSGとシティのオーナーは自らが所有するクラブの予算を増やす目的で、最近の7年間で両クラブ合計45億ユーロ(約5800億円)もの資金を投入していたという。そのうち27億ユーロ(約3480億円)については、アブダビのオーナーが出資したものに加え、「水増し」したとされるスポンサー契約からシティに投入されたものと見られている。

 さらに、PSGについては総額10億7500万ユーロ(約1386億円)、年間にして2億1500万ユーロ(約277億円)というカタール観光局(QTA)との5年契約についても、同サイトが指摘している。調査内容によると、その数字についても「UEFAに任命された独立会計監査官2人の見積もりでは、年間12万3000ユーロ(約1590万円)だった年もあれば、年間280万ユーロ(約3億6100万円)だった年もあった」とされている。

 UEFA規則では、いかなるシーズンにおいても収入を超える金額を費やしてはならないとされており、損失額については3シーズンで3000万ユーロ(約38億6800万円)の限度額に収めることが義務づけられている。

 PSGとシティはFFP違反で2014年5月にUEFAから6000万ユーロ(約77億3600万円)の罰金を科されたが、要件を満たせば4000万ユーロ(約51億5700万円)の払い戻しが受けられると伝えられていたという。

 フランスのニュースサイト「メディアパルト(Mediapart)」によると、国際サッカー連盟(FIFA)の現会長でもあるインファンティーノ氏が、クラブ経営を監視するUEFAのクラブ・ファイナンシャル・コントロール・パネル(CFC Panel)を経由して、「直接的にマンチェスター・シティと交渉を行った」とされており、「罰金額を6000万ドルから2000万ドル(約25億7900万円)にすること」を提示したという。

 その際には、インファンティーノ氏からシティのカルドゥーン・アル・ムバラク(Khaldoon Al Mubarak)会長に送られた電子メールが、フランスの元大統領でPSGのファンであるニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)氏にも宛てられてたとされている。サルコジ氏については、FFP規則の裏をかくためにシティのアブダビオーナーの手助けもしていた疑いがある。

 PSGはコメント文を発表し、チームは「常にすべての準拠法や規則を厳密に順守しており、本日メディアパルトで伝えられた疑惑については断固否定する」と述べた。PSGの副最高経営責任者を務めるジャン・クロード・ブラン(Jean-Claude Blanc)氏は、AFPの取材に対して、「UEFAとの裏取引は何もない。すべて完全な透明性の下で行われた」と強調した。

 FIFAも同日、一連の疑惑に対して、同連盟の「リーダーシップをおとしめる」意図があると主張。インファンティーノ会長は、「物事を改善するために、改革を行い、前進し、そして人々が一致団結することは、常に困難を伴う」「そして、われわれが断固たる決意でFIFAの改革に努めている中、特に恥知らずにも以前のように組織から利益を受けられなくなった人間から、強い反発に直面することについて私は常に覚悟していた」とのコメント文を発表した。

 フットボール・リークスは、インファンティーノ会長とリナルド・アーノルド(Rinaldo Arnold)とされるスイス検察官との関係にも焦点を当てている。報告書によると、アーノルド氏にはW杯(World Cup)や欧州チャンピオンズリーグの試合に加えて、2016年に開かれたFIFA総会の「招待状」が送られ、代わりにインファンティーノ会長には捜査中の詳しい情報が流れていたとされている。

 FIFAはAFPの取材に対し、「当連盟の内部指令および規定では、会長と事務局長にはFIFA主催の大会やイベントに、大勢のゲストを招待する権限が与えられている」と説明した。(c)AFP/Andy SCOTT