【11月2日 AFP】パキスタン最高裁が10月31日、イスラム教に対する冒涜(ぼうとく)の罪に問われたキリスト教徒女性に対する死刑判決を覆し無罪を言い渡した。判決に反発した一部の過激派組織は最高裁判事らの殺害を呼び掛けており、イムラン・カーン(Imran Khan)首相はイスラム教強硬派による暴力の扇動を非難し、冷静になるよう呼び掛けた。

 死刑に直面していたキリスト教徒のアシア・ビビ(Asia Bibi)さんに対し最高裁が無罪を言い渡したことをきっかけとしてパキスタン国内各地では抗議行動が巻き起こった。

 カーン首相は判決の後に国営放送で演説し、国民に最高裁の判断を尊重するよう強く求めた。「彼らは自分たちの政治的利益のためにあなたたちを扇動している。国の利益のために彼らの策略に捉えられてはならない。彼らはイスラム教に奉仕をしていない」と述べた。

 極めて保守的なイスラム教国家のパキスタンでは冒涜は扇動の罪で、イスラム教やその預言者ムハンマド(Prophet Mohammed)を侮辱したとの疑いが掛けられれば、証明がされなくても私刑により殺される可能性もある。

 国内主要都市では最高裁で無罪が言い渡された直後から抗議デモが発生。首都イスラマバードでは、こん棒を振りかざした抗議者が幹線道路を閉鎖、カラチ(Karachi)やラホール(Lahore)の道路をバリケードで封鎖した。

 パキスタンの強硬派宗教政党TLPは軍最高幹部らに対する「反乱」と最高裁判事らの暗殺を求めた。

 カーン氏は31日、暴力を扇動する強硬派への対決姿勢を明確にし、扇動的な発言は「パキスタンの敵」に利益をもたらすだけだと言明した。今年8月に首相に就任したカーン氏に対しては、選挙期間中に冒涜法の擁護を明言していたことを懸念する声も上がっていた。

映像は、首都イスラマバードで最高裁の判決に抗議するTLPの支持者ら。1日撮影。(c)AFP/Gohar ABBAS