【10月30日 AFP】第2次大戦中に日本統治下の朝鮮半島から日本本土に徴用され強制労働をさせられたとして、韓国人の元徴用工4人が鉄鋼大手の新日鉄住金(Nippon Steel & Sumitomo Metal)を訴えていた裁判の上告審で、韓国大法院(最高裁)は30日、新日鉄住金に損害賠償の支払いを命じた高裁判決を支持し、各原告に1億ウォン(約1000万円)の支払いを命じる判決を言い渡した。原告の元徴用工4人のうち、現在も生存しているのは1人のみ。

 元徴用工の4人は、1941年から1943年に新日鉄住金の前身となる日本製鉄の製鋼所で強制労働させられたとして、1997年に日本で損害賠償を求める訴訟を起こしたが、個人の補償問題は1965年の「日韓請求権協定」で解決済みだとして、原告側が敗訴。元徴用工らは同問題を2005年と2012年に韓国の裁判所に提訴し、高等法院(高裁)が差し戻し控訴審で個人の請求権を認める判決を下していた。

 新日鉄住金は判決を不服として上訴したが、最高裁に当たる大法院が30日の判決でこれを棄却したため、21年に及んだ訴訟は新日鉄側の敗訴が確定した。

 原告4人のうち、ただ一人の生存者となった李春植(イ・チュンシク、Lee Chun-sik)さん(94)は車いすで記者会見に臨み、「勝訴のニュースを一人で聞くことになって心が痛む」と述べ、残っているのは自分だけとなって悲しいと涙を浮かべた。

 一方、新日鉄住金は判決について、日本が韓国側に有償無償5億ドルの経済支援を行うことで日韓両政府が合意した1965年の日韓請求権協定に反するものであり「極めて遺憾」とのコメントを発表した。

 30日の判決は日韓の外交関係に影響を及ぼすことが懸念される。(c)AFP