【10月30日 AFP】欧州で高い政治力を発揮してきたアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相が2021年の任期満了をもって退任する意向を29日に表明したことで、近年のポピュリストの台頭を背景に欧州連合(EU)が機能不全に陥る恐れがあると、外交関係者や政治アナリストらが警告している。

 彼らは、メルケル氏が退任を宣言した後のEUでは、移民問題やユーロ圏改革などの主要議題をめぐる分裂の隙間を埋めることができないと懸念する。

■EU役職への意志もなし「欧州にとって大きな痛手」

 仏シンクタンク「ジャック・ドロール研究所(Jacques Delors Institute)」のセバスチャン・メヤール(Sebastian Maillard)氏は、「欧州ではもう誰も彼女(メルケル氏)の言うことに耳を貸さないだろう。彼女は自分からさっさと退場したのだ」とAFPに語った。

 メヤール氏が危惧するのは、メルケル氏が中道右派キリスト教民主同盟(CDU)の党首や独首相を辞める意向を宣言しただけでなく、EUの役職を務める意志もないと述べた点だ。「欧州にとって大きな痛手だ」

 欧州政策センター(EPC)のアナリスト、ジュリアン・ラポルト(Julian Rappolt)氏は、来年5月の欧州議会(European Parliament)選挙までEUが重要な決断を下すことはほぼないとみる。「年内は何もないだろう。おそらく欧州議会選まで動きは何もないと思う。欧州規模でまひ状態に陥る危険がある」