【11月13日 AFP】アフリカ・ビクトリア湖(Lake Victoria)に浮かぶ小さな円形の島、ミギンゴ島(Migingo Island)。ごつごつした岩状の地面がトタン造りの小屋で埋め尽くされているさまは、鉄板の甲羅を背負ったカメのようにも見える。

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 島は、かろうじて2500平方メートルに届く大きさだが、人口密度は非常に高い。住民は、無秩序に立ち並ぶトタン造りの家屋に、すし詰め状態で暮らしている。島にはバーや売春宿数軒と小さな港があるだけで、他に特筆すべきものはほとんどない。

 ミギンゴ島はウガンダとケニアの国境付近にあり、10年以上にわたり、両国間の緊張の火種となってきた。島をめぐり両国はかつて、アフリカ「最小の紛争」とも呼ばれる事態に陥る寸前まで追い込まれたこともあるが、島の帰属はいまだ明確になっていない。

 ビクトリア湖周辺の漁場ではここ数年、漁獲量が徐々に減少傾向にあるが、ミギンゴ島周囲では、ナイルパーチなどの魚が豊富に取れる。

 ミギンゴ島に住むウガンダ人のアイザック・ブヒンザ(Isaac Buhinza)さん(22)は、父親から漁を教わった。学校へは一度も通ったことがない。「以前ここに住んでいた友人たちが、たくさんの獲物を手に戻って来た」と、ミギンゴ島に引かれた理由を振り返り、「どちらの国に属そうが、ここに住むだけだ」と話した。

 ブヒンザさんのような漁師にとっては、この小さな島に暮らすことで燃料が節約でき、卸売業者と直接取引を行う機会も得られる。

 ウガンダ当局がこの島に関心を持つようになったのは、2000年代初頭のこと。島は当時、どの地図でもケニアに属しており、住む人はほとんどいなかった。ウガンダ当局はミギンゴ島に役人を送り、漁師から税金を徴収する代わりに、海賊から守った。

 一方、ケニアの漁師は自国の水域でウガンダ人漁師から脅され、島に近づけなくなったと不満を漏らすようになった。漁師から要請を受けたケニア政府は、ミギンゴ島に治安部隊を派遣。これを機に両国は2009年、衝突寸前にまで至った。

 その後両国は、湖上の国境を決定するための合同委員会の設置を決めた。国境は、1920年代の地図を根拠に定めることとし、その解釈が重要な争点となった。

 だが、委員会は何の合意にも至らず、両国は湖上の国境を決めないまま、合同で島を管理している。双方にとって都合の良い妥協策ではあるが、2国間の対立は今も激化と緩和を繰り返している。(c)AFP/Nicolas DELAUNAY