【10月27日 AFP】ヒマラヤの王国ブータンで優しく風を切る風力タービンの音が、世界で唯一のCO2排出マイナス国であることを雄弁に語っている。だが、激しい経済の拡大よりも環境にやさしい道を選んだこの国の前途には、難題が山積している。

 今回でわずか3度目となる国民議会選挙が今月18日に行われたばかりのブータンは、国土の72%が豊かな森林に覆われており、CO2吸収量が排出量の3倍となっている。

 成功の尺度を幸福度によって決める「最後の地上の楽園」として名高いブータンは、国土の大きさはスイスと同じぐらいだが、もうけを犠牲にしても手付かずの環境を維持することに注力してきた。

 人口約80万人の同国は、観光シーズンの旅行客には1日250ドル(約2万8000円)を科して観光客の数を制限し、他国の景観地の悩みのタネとなっている観光ブームを寄せ付けないでいる。

 同国は今年5月、インドが支援する周辺国地域の道路連結計画から撤退した。他国から来るトラックによる空気汚染への懸念が最大の理由だ。

 ブータンの憲法は、国土の少なくとも60%が森林でなければならないと規定しており、農業や潜在的に収益の高い林業に歯止めをかけている。

 国家環境委員会(National Environment Commission) のパルジョル・ドルジ(Paljor Dorji)氏は「わが国の森林資源に手を付ける誘惑は大きかったが、長い目で考えた」と語る。