■キュリオシティーの発見がきっかけ

 今回の最新研究のきっかけは、米航空宇宙局(NASA)の火星無人探査車「キュリオシティー(Curiosity)」による酸化マンガンの発見だった。酸化マンガンは大量の酸素によってしか生成されない化合物だ。

 さらに、キュリオシティーは火星周回探査機とともに、複数の塩水貯水層の存在を確認した。各貯水層に含まれる元素には顕著なばらつきがみられた。

 塩類含有量が高いと、水が液体の状態を維持できるため、通常よりはるかに低い温度で酸素が溶解するのに必要な条件が保たれる。これにより、塩水が微生物の生存に適した場所となる。地域、季節、時刻によって、火星の気温はマイナス195度~20度の範囲で変化する可能性がある。

 研究チームは、氷点下で酸素が塩水にどのくらい溶解するかを説明する第1のモデルを考案した。また第2のモデルでは、過去2000万年と今後1000万年の火星上の気候変動を推定した。

 これらのモデルに基づいて推算を行った結果、塩水に溶け込んだ酸素が生成される可能性が最も高いのは火星のどの地域かが明らかになった。このデータは、将来の探査機の配置を決定する助けになる可能性がある。

「(火星上の)酸素濃度は、好気性微生物が必要とする濃度よりも数桁大きい(数百倍の)値となっている」と、論文は結論付けている。

 スタメンコビッチ氏は「今回の結果は、火星上に生命が存在することを意味するものではない」と注意を促しつつ、「だが、溶存酸素が存在する可能性によって、火星の生命存在可能性が影響を受けることを、今回の結果は示している」と述べている。(c)AFP/Marlowe HOOD