【11月19日 AFP】米大リーグ(MLB)の投手を相手にした打撃練習から、フォーミュラワン(F1、F1世界選手権)ドライバーになりきってのスリリングなレースまで、先日英ロンドンで開催されたスポーツ産業トップの集まりでは、テクノロジーがスポーツに革命を起こす可能性がホットな話題として取り上げられた。

 ロンドンでは先日、サッカーイングランド・プレミアリーグの名門チェルシー(Chelsea)の本拠地スタンフォード・ブリッジ(Stamford Bridge)を会場に、「スポーツ・ビジネス・サミット」が2日間にわたって開催された。

 その席で、バーチャルリアリティー(VR)の専門家であり、米IBMやグーグル(Google)での経験も持つマイケル・ラッデン(Michael Ludden)氏は「VRは、スポーツにおいて考え得るあらゆる側面を破壊するでしょう」と話し、VRや拡張現実(AR)、複合現実(MR)によって、プロやアマチュア、さらには観戦するファンにとっても、スポーツは生まれ変わっていくだろうと予想した。

 ラッデン氏は「アメフト選手はすでにVRを使って判断能力やフィールドを読む力を効率良く鍛えています」と話し、VRのおかげで、クオーターバックたちが負傷を恐れず技術を磨けるようになると主張した。そして「VRで動きを捕捉できる本物のバットを使い、実在する投手のデータから再構成した本物の投手を相手に練習することもできます。高いレベルで自分のスイングを分析できるようになるのです」と続けた。

 フェイスブック社(Facebook)のVRヘッドセット「オキュラス・リフト(Oculus Rift)」の値段が下がっている中、今後はアマチュア選手がMRを使い、自宅の安全な居間で、時速160キロの球に相対する練習ができるようになる。

 MRが聴覚的、視覚的にユーザーを仮想世界へ引き込む一方、トップレベルの選手の争いを触覚的に再現するテクノロジーの開発も始まっていて、全く新しい観戦体験の世界が開けようとしている。今回のイベントには、映画館やテーマパークの可動シートの設計や製作を請け負うカナダの会社「D-BOXテクノロジーズ(D-BOX Technologies)」が、F1カーのシミュレーターを出品した。

 ユーザーは座席につくと、F1チャンピオンのルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton)がモナコの市街地コースを走るときと同じGや振動を体験できる。イベントでは事前にプログラムしたデータを使っているが、車からリアルタイムで送られてくるデータを使うこともできるので、ユーザーは好きなドライバーを選んでF1のグランプリを丸ごと体験できる。

 同社のディレクターは、「必要なのは、タイヤの摩擦係数やサスペンション、加速といったマシンから直接送られてくるデータです。われわれはそうした最小限の情報を取り込み、つくり変えます。世界中のポップアップシアターで、レースの様子をネット中継することもできます」と話し、F1会場のファンゾーンにこのシミュレーターを持ち込むことを検討していると明かした。

 ディレクターによれば、D-BOXの技術は、例えばボート競技のような座って行う他のスポーツの練習にも応用できるとのことで、すでに競馬業界の関係者から関心が寄せられているという。