【10月19日 AFP】ブラジル大統領選において、ソーシャルメディアやメッセージサービスを使って偽の情報を拡散させる不正工作が横行しているとの疑惑が浮上している。2年前の米大統領選や欧州連合(EU)離脱をめぐる英国の国民投票で明らかとなったソーシャルメディアを使った世論操作に、また注目が集まっている。

 今月7日に投開票が行われたブラジル大統領選の第1回投票では、極右のジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)下院議員が46%を得票。2位の左派・労働党のフェルナンド・アダジ(Fernando Haddad)元サンパウロ市長との決選投票にもつれ込むことになった。

 しかし18日、複数の企業がメッセージサービス「ワッツアップ(WhatsApp)」を使い、アダジ氏と労働党を非難する内容のメッセージを大量に送る準備をしていることが報道により発覚。アダジ氏はこの報道を受け、ボルソナロ氏が「不正な」選挙戦術を用いていると非難した。

 一方、ボルソナロ氏はこの疑惑を否定し、労働党は「フェイクニュースではなく、真実によって打ちのめされている」とツイッター(Twitter)で反論した。

 10日後に控える決選投票ではボルソナロ氏の圧勝が予想されている。ボルソナロ氏は大げさな物言いやインターネットを駆使することで知られる銃支持派の論客で、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領ともよく比較される。

 AFPがブラジル市民に取材すると、多くが家族や身近な人の中にワッツアップで偽の情報を受け取った人がいると述べた。ただ、自分自身はそうした情報に影響されることはないとも語っている。

 リオデジャネイロ在住のエンジニア、アナ・クララ・バーリ(Ana Clara Valle)さん(27)は、「私たちは政治に関する多くのニュースを見聞きするが、間違ったものもあれば真実もある。でも、意思決定という点でいえば大きな変化をもたらすとは思わない」と語る。

 バーリさんは「極右」的な雰囲気からではなく、カトリックで家族を大事にする姿勢からボルソナロ氏に投票するつもりだという。

 やはりボルソナロ氏に投票するつもりだと語った弁護士のアンドレ・デソウザ(Andre de Souza)さん(35)は、両候補を支持したり非難したりする内容のワッツアップのメッセージを1日500件近く受信したという。

 人口およそ2億1000万人のブラジルには約1億2000万人のワッツアップユーザーがいる。ワッツアップは友人間や家族間、同僚間の通信手段として広く使われており、親会社のフェイスブック(Facebook)をしのぐ人気だ。