【10月28日 AFP】堂々としたキリン、力強いアフリカライオンに、誇らしげなベンガルトラ──中米ホンジュラスの青々とした山あいに、まるで旧約聖書に登場する「エデンの園」のような動物園がある。見どころたっぷりのこの動物園、実は、麻薬密売で大もうけした犯罪組織がつくったものだ。

 ただ、かつては観光客で栄えたエコパーク「ホヤ・グランデ(Joya Grande)」も、今は資金不足で経営が傾いている。

 首都テグシガルパから北に約150キロ、丘の上の動物園を創設したのは、ホンジュラス最大の犯罪組織「カチーロス(Cachiros)」だ。南米コロンビアの麻薬王、故パブロ・エスコバル(Pablo Escobar)が広大な私有地に設けたテーマパーク「アシエンダ・ナポレス (Hacienda Napoles)」をまねたと言われている。

「とても繁盛していたエコパークだった。目新しかったし、投資もたくさんした」と、ホヤ・グランデのマリア・ディアス(Maria Diaz )園長はAFPの取材に語った。だが、カチーロスが2013年に米国の制裁の対象となり、動物園の経営陣も逮捕されて以降は「資金が不足している」という。

 グアテマラ出身で生物学者のディアス園長は、ホヤ・グランデを維持するためホンジュラス政府の資金援助を切望している。

 国の押収資産管理事務所(OABI)は2014年4月、カチーロスから動物園を押収した。ディアス園長はその際、月額7400ドル(約83万円)で施設の運営を続行するという譲歩を政府から引き出すことに成功。数百頭の動物たちの世話と施設管理を監督するため「ノアの箱舟獣医師サービス(Noah's Ark Veterinarian Services)」という法人を立ち上げ、運営は経済的にはうまくいっていた。

 ところが、昨年11月のホンジュラス大統領選でフアン・オルランド・エルナンデス(Juan Orlando Hernandez)大統領が再選すると、選挙に不正があったとして大統領への抗議デモが始まった。4か月にわたって続いたデモの間、ホヤ・グランデに通じる主要道路はデモ隊に封鎖され、来園客数は激減した。