【10月17日 AFP】米体操連盟(USA Gymnastics)の暫定最高経営責任者(CEO)に任命されていたメアリー・ボノ(Mary Bono)氏が16日、五輪選手のシモーネ・バイルス(Simone Biles)とアレクサンドラ・レイズマン(Alexandra Raisman)の批判を受け、就任後わずか4日で辞任した。

 12日に暫定CEOへの就任を発表されながら、バイルスやレイズマンからの批判を受け、立場が徐々に危ういものになっていた元共和党下院議員のボノ氏は、「個人攻撃」により辞任せざるを得なかったと話している。

「非常に残念ですが、体操への深い愛情と偉大な選手を目指している人たちへのリスペクトを込めて、私はきょう米体操連盟暫定CEOの辞表を提出しました」「公に個人攻撃がなされ、私が米体操連盟を率いると組織にとって不利益になるため、結果として辞任することになりました」

 ボノ氏は先月、国歌演奏の際の膝つき抗議を始めた元米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)選手、コリン・キャパニック(Colin Kaepernick)をキャンペーンに起用した米スポーツ用品大手ナイキ(Nike)に対して批判的なツイートをし、バイルスは不快感をあらわにしていた。

 ボノ氏は米軍のチャリティーゴルフに参加した際、自身のナイキのゴルフシューズのロゴを黒塗りにした写真を投稿。これに対し、ナイキがスポンサーを務めるバイルスは13日、「開いた口がふさがらない。心配しないで。別に私たちがもっとスマートな米体操連盟のトップを必要としていると言いたいわけではないから」とツイートしている。

 また、レイズマンはボノ氏の暫定CEO就任をツイッター(Twitter)で批判し、同氏とフェーガー・ベーカー・ダニエルズ(Faegre Baker Daniels)法律事務所の関わりが注目を集めた。

 同選手の主張によると、米体操連盟の元チーム医師であるラリー・ナサール(Larry Nassar)被告による性的虐待スキャンダルのさなか、ボノ氏が関係している同法律事務所が、被告の罪の「隠蔽(いんぺい)」を連盟に助言していたという。

「チームメートと私は、2015年に米体操連盟に対してナサール被告の虐待行為を通報した」「米国オリンピック委員会(USOC)と(メアリー・ボノ氏の事務所である)フェーガー・ベーカー・ダニエルズの弁護士らは、当時そのことを知らされていたのに、ナサール被告による子どもたちへの虐待行為は、それから13か月間も続いていた!?」「なぜ、虐待行為の隠蔽に手を貸すような事務所の関係者を雇うのでしょうか?」

 2012年ロンドン五輪と2016年リオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得したレイズマンは、自身もナサール被告による虐待の被害を受けており、スキャンダルをめぐり米体操連盟とUSOCを相手取り訴訟を起こしている。同被告は今年、2012年と2016年の五輪に出場した米代表のスター選手を含め、250人以上の選手を虐待していたとして終身刑を言い渡された。

 レイズマンは15日、「虐待サバイバー、現役の体操選手、家族、コーチ、体操コミュニティーとファンの人たちは、もっと良い扱いに値する」と訴えている。(c)AFP/Rob Woollard