【10月20日 AFP】かつて若い恋人たちの定番デートスポットだったドライブインシアターは、古き良き時代の産物、レコードプレーヤーとほぼ同じ運命をたどっている。

 恋人たちが自宅で動画配信大手ネットフリックス(Netflix)を見ながらいちゃつくことを意味するフレーズ「ネットフリックス・アンド・チル(Netflix and chill)」のような過ごし方が人気となる中、一部の映画ファンは、ドライブインシアターはまだまだ廃れていないと言い切る。米バージニア州の田舎町では、ノスタルジックな気分に浸りたい人々が、星空の下でポップコーンを頬張りながら2本立て映画を楽しむことができる。

 ここでの楽しみ方は、いろいろだ。マイカーに乗ったまま、気兼ねなく、あくびや伸びをしながら大型スクリーンを眺めることができるし、「テールゲートパーティー(駐車場などで車の後部ドアを開けて行うパーティー)」のように、子どもたちが遊び場で走り回っている横で、大人たちはスナック片手におしゃべりしながら映画を観賞することもできる。

 米首都ワシントンの西方約135キロに位置するバージニア州スティーブンズシティー(Stephens City)の「ファミリー・ドライブインシアター(Family Drive-In Theater)」は、今も営業を続けている。こうした施設は、全盛期の1960年代に米国内に4000か所あったが、今はわずか300か所に減少し、米国の古き良き時代の名残のような存在になっている。

 同ドライブインシアターでは2本立ての映画が上映されており、料金は大人は8ドル(約910円)、子どもは半額。ペットの同伴もOKだ。1956年に開業し、現在は同地域で唯一営業を続けている。車に子どもたちを乗せて映画を見に来たデビー・ウィリアムズ(Debbie Williams)さんは、「私たちのような子ども連れにとっては、とても経済的」と話し、「それに(普通の映画館に行くのとは)違う経験ができる」「屋外だし、空気は新鮮だし、星も眺められるし、混雑もしていない」と説明した。

 首都ワシントンにある「ユニオン・マーケット(Union Market)」でも、月に1回、野外で映画上映会を行っている。来場者にノスタルジックな気分を味わってもらえるよう、売り子の女性たちがローラースケートで商品を販売しに回るサービスも提供している。

 10代のジョセフィン・クリッテンデン(Josephine Crittenden)さんにとって、ドライブインシアターは、映画『グリース(Grease)』などでしか見たことのないレトロな空間だ。同映画では、主人公の男女、ダニーとサンディが、ドライブインシアターでのデート中に険悪になるシーンがある。屋外で映画『ブラックパンサー(Black Panther)』を見ようと、家族所有の1968年製のトラック「ブロンコ(Bronco)」に乗っていたクリッテンデンさんは、こうした環境で映画を見ると「特別なイベント気分」が味わえると話す。

 ドライブインシアターに行くのは、魅力があるからだと言うクリッテンデンさん。「過去にタイムスリップしたような気がするんです」と話した。(c)AFP/Gilles CLARENNE