■「刷り込み領域」

 哺乳類はほとんどの場合、生殖過程で母親と父親からそれぞれ1組ずつ、2組の遺伝子を受け継ぐ。

 だが「刷り込み遺伝子」として知られるごく一部の遺伝子は一方の親からのみ受け継がれる。

 こうした遺伝子に関しては、もう一方の親からもたらされる一連の遺伝子が効果的に不活性化され、発現が制御される。これが正しく機能しないと、子は先天異常を発症したり死に至ったりする恐れがある。

 しかし、同性の両親からの遺伝物質を混ぜ合わせることにより、子には2組の「刷り込み遺伝子」が受け継がれるリスクがある。

 そのため今回の研究では「精子や卵子の前駆体である始原生殖細胞」に似た半数体胚性幹細胞(ES細胞)を用いたと、論文の共同主執筆者の胡宝洋(Baoyang Hu)氏は説明する。

 次に、通常の生殖の「発現制御」プロセスを効果的に再現するために、半数体ES細胞の遺伝子構成を改変して「刷り込み領域」を取り除いた。

 雌マウスの場合、三つの「刷り込み領域」を削除した細胞をもう一方のマウスの卵子に注入した。

 雄マウスの場合、七つの「刷り込み領域」を削除した細胞を、もう一方の「父親」マウスの精子とともにマウス卵子に注入した。マウス卵子の細胞核は除去されているため、雌の遺伝物質は残っていない。この受精卵は代理母に移植された。

 研究チームは今回、雌マウスのDNA2組と遺伝子操作技術を用いて、210個の胚から29匹の子マウスを誕生させた。子マウスは成体になるまで生存し、正常に繁殖した。

 一方、雄の2組の遺伝物質から誕生させたマウスは48時間しか生存できなかった。研究チームはこの生殖方法が正しく機能しなかった理由についてさらに研究を重ねる予定だ。(c)AFP/Sara HUSSEIN