【10月11日 時事通信社】英国で3月に起きた軍用神経剤による元ロシア情報員暗殺未遂事件をめぐり、英調査報道機関ベリングキャットがスクープを連発している。元ブロガーが運営するいわば「市民ジャーナリスト集団」だが、BBCはじめ既存の大手メディアをしのぐ活躍ぶりも見せている。

 9月26日、ベリングキャットはサイトで、英当局が神経剤事件の容疑者と特定したロシア人2人のうち、1人はロシア軍参謀本部情報総局(GRU)に所属する本名アナトリー・チェピガ容疑者だと写真を添えて報じた。英各メディアはこれを引用する形でトップニュースとして報道。ベリングキャットは続いて10月8日、2人目の容疑者についても本名と経歴が判明したと伝えた。

 ベリングキャットは英レスター在住のエリオット・ヒギンズ氏(39)が大学中退後、「趣味」でブログを始めたのがきっかけ。紛争問題などに関する記事が評判を呼び、同氏はネット上で寄付を募る「クラウドファンディング」で資金を集めて2014年、「進んで難局に当たる」を意味するベリングキャットを立ち上げた。

 記者経験のなかった同氏だが、ライターや活動家に参加を呼び掛け、ネット情報や公文書を解析・分析するデータジャーナリズムの手法で中東情勢などを取材。14年にウクライナ上空で起きたマレーシア航空機撃墜事件では、関与したとみられるロシア兵らを特定し、注目を集めた。

 神経剤事件では、ロシア軍士官学校の卒業アルバム写真や関連映像、ロシア機関の漏えいデータを分析するなどし、容疑者特定に至った。ロシア政府は「事実無根」といら立つが、ヒギンズ氏は「批判には慣れている。ロシアが記事に反応しない方が驚きだ」と余裕を見せている。(c)時事通信社