【10月15日 Xinhua News】「海外の空港で二次元バーコード読み取りによる税払戻」「スーパーでスマートフォンによる独自決済」「音声による地下鉄乗車券購入」―。国慶節連休に、海外旅行や周辺観光で、このようなモバイル決済が至るところで見られた。中国のモバイル決済浸透率は68%に達した。

 中国銀聨の統計によると、1日から3日まで、海外でのモバイル決済金額は前年同期の2倍以上となり、国内でのモバイル決済金額は24.5%増の6695億元(1元=約16円)になった。

 改革開放から40年、中国では人々のお金に対する認識が変わりつつある。決済方式の変化の背景には、経済繁栄、技術進歩がある。また、斬新なライフスタイルがはやり、業態が一変するという事態も生まれている。中国は海外での金融施設の整備を急ぎ、中国と海外を結び付ける「懸け橋」を構築している。決済革命こそが、中国が40年間の改革で挙げた成果の縮図と言える。

▽国民の7割が電子決済利用

 電子決済の普及率は76.9%で、うち農村は66.51%、農村のモバイルバンキング決済件数は79.12%増の91億1千万件に達した。中央銀行が発表した「2017年中国包括的金融指標分析報告書」は中国で急速に成長している決済市場の実例を紹介した。

 中国銀聯戦略・投資部の劉源(りゅう・げん)総経理は「第三者決済機関の成立と発展について言えば、海外ではクレジットカードや電子決済などのキャッシュレス決済の普及に30~50年費やしたが、中国はわずか15年程度で電子決済普及率7割以上を実現した」と述べた。

 お金に対する国民の意識も変わった。上海奉賢区の邵根才(しょう・こんさい)さん(79)は1958年から82年までのいろいろな配給券を収集している。1千枚余りの「落花生票」「ゴマ票」「靴票」「糸票」などのほか、「2.5g食用油票」「5g肉票」などの小額の配給券もある。邵さんは「あのモノ不足の時代に、いくら額面が小さくても非常に貴重なもので、この配給券がなければ、何もできなかったからだ」と語った。

「糧票」「食用油票」などの流通は1993年になくなり、40年間続いた「票の時代」は終わり、モノが豊富で、繁栄し、多彩な社会主義市場経済の時代が始まった。

 中国決済技術の躍進は市場を栄えさせるだけでなく、人々を助けて都市・農村格差を解消している。昨年末時点で、中国の1人当たりの銀行カード保有量は4.81枚、農村地域の一人当たりの銀行カード保有量は2.97枚、農村地域のモバイルバンキング登録数は5億1700万件になった。便利な金融サービスは社会に浸透している。ますます多くの農民が村を出なくても、資金の振り替えや引き出しを行うことができ、しかも、非接触型決済(クイックパス)を使い、公共料金を納めることができる。

 電子商取引(EC)と便利な決済手段のおかげで、農民は消費者に山里の新鮮な農産物を直接提供している。便利な物流やデータの流れにより、一般農家は初めての融資を獲得している。

 内モンゴル自治区フフホト市ホリンゴル県の張有全(ちょう・ゆうぜん)さん(50)は現在、5千頭余りの羊を飼育、企業と長期買取契約を結んだが、「信用があるのに、信じてくれる人間がいない」ことに悩んできた。二次元バーコードによる代金受け取り・支払いを使うと、売上高は信用に変わる。こうして、張さんはアリババグループ傘下の金融会社・螞蟻金服(アント·フィナンシャル)から1年間の融資30万元を獲得、申請当日、払い込まれた。

 螞蟻金服の井賢棟(エリック・ジン)董事長は「科学技術により、包括的金融は一般人に行き渡っている。従来の金融サービスが届きにくい未発達地域で、モバイル決済の利用により、人々は多様な金融サービスを体験できるようになっている」と述べた。

▽モバイル決済浸透率68%

 中央銀行のデータによると、昨年の中国モバイル決済件数は46.06%増の375億5200万件、金額は28.8%増の202兆9300億元に達した。上半期のモバイル決済件数は258億8700万件、金額は133兆7千億元で、高成長が続いている。

 2017年ネット通販イベント「双11」(独身の日)で、支付宝(アリペイ)による決済の1秒当たりの最高は25万6千件に達した。中国国家情報センターのチーフエコノミスト、範剣平(はん・けんぺい)氏は「中国のネット通販金額は10年前、世界の1%に満たなかったが、現在、40%以上となり、英国、米国、日本、フランス、ドイツの5カ国の総和を超えている。モバイル決済の浸透率は68%で、金額は米国の11倍」と述べた。

 渤海の浜辺からチベット高原まで、内陸部から長江流域まで、超大都市の北京・上海・広州・深圳から農村まで、スマートフォンによるバス乗車は大都市以外でも見られるようになった。中国銀聯は400余りの市・県の路線バス、11都市の地下鉄にクイックパスあるいは二次元バーコードを導入している。広州ー深圳都市間高速鉄道の全線で、クイックパスによる乗車が実現した。「手を振る」だけで、一つの都市から別の都市に行くことが可能となった。

 スマートフォンのアプリを通じて親のために病院外来を予約する。若者たちの親を思いやる新しい形だ。10都市の20余りの病院を対象に行った調査の結果によると、約10%のユーザーはインターネットを通じ、遠く離れたところから親のために外来を予約、医療費を支払い、順番待ちの時間を省く。全国の55都市で、微信(ウィーチャット)を使って医療費を支払うことができる。

 スマートフォンをかざすだけのモバイル決済は国民の消費習慣とライフスタイルを変化させつつある。女性運転手は駐車場で駐車カードを取るのに手がなかなか届かないという心配がなくなった。「無感支付」という自動決済システムを導入する駐車場がますます増えているためだ。アリババグループや京東集団(JDドットコム)、蘇寧電器などの小売大手が試験的に展開した「無人店舗」で、顧客は顔認証により、店内に入り、商品を選ぶと、並んで代金を支払う必要はなく、システムは顧客を自動的に認識し、スマホのアプリで代金を自動的に差し引く。

▽148カ国・地域に広がるCIPS

 決済機関の海外進出と同時に、人民元の国際化も急成長している。人民元国際決済システム(CIPS) の最新統計によると、CIPSは31の内外直接参加者、695の間接参加者を引き付け、148カ国・地域に事業を広げている。昨年末時点で、自由貿易口座を通じ、「一帯一路」(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)沿線諸国・地域との収支は2886億元に達した。

 国慶節連休には、各国も繁忙期を迎えた。欧州の有名なビスタービレッジの業者らは支付宝を導入し、中国語が話せる店員を配置した。イタリア・ミラノのドゥオーモ大聖堂は支付宝による入場券購入を受け付けるだけでなく、外壁のテレビ画面で中国語動画を繰り返し放送した。フランスの百貨店プランタンはわざわざ中国人観光客を対象に店内でのスマートフォンによる税払戻サービスを提供した。アイスランドのような中国人観光客がそれほど多くない国でさえ、モバイル決済を導入している。

 業者だけでなく、政府も歓迎している。オーストラリア・ケアンズ市の市長は中国人観光客向けに発信した動画で、「ケアンズ市民は国慶節連休中の中国人観光客の来訪を歓迎する。ここは景色が美しく、人々は友好的で、あなた達の知っているモバイル決済も整備している」と発言した。

 銀聨国際のデータによると、今年の国慶節連休中、欧州などの遠い観光先が中国人観光客に人気があり、モーリシャスやモロッコ、ブラジル、ベルギー、スロベニアなどの新しい観光先でのモバイル決済が明らかに増えている。「一帯一路」沿線諸国・地域はますます中国人観光客に歓迎され、カンボジアや中東、ロシアなどでの消費規模は前年同期と比べ4割近く増えた。

 今年は「一帯一路」構想が提起されて5周年となる。決済は疑いなく「一帯一路」構想実施の重要な下支えとなっている。中国の決済機関はここ数年、海外進出を加速し、中国と海外を結ぶ「懸け橋」となっている。

「一帯一路」沿線の60数カ国・地域は現在、中国銀聯カード決済を受け付けている。海外での銀聨カード発行量は3500万枚を超え、受付業者は570万社、自動現金預払機(ATM)は68万台。アフリカの50カ国・地域は銀聨カード決済を受け付け、比率は75%を超えている。

 中国は海外での金融施設整備を加速している。セルビアやベラルーシ、タジキスタンなどの国は中国銀聯の基準に応じて決済ネットワークを整備している。中国銀聯のチップ内蔵カード基準はタイやミャンマー銀行業の推奨基準となっている。

 中国銀聯の時文朝(じ・ぶんちょう)総裁は「スムーズな決済清算はスムーズな『一帯一路』貿易や資金融通の前提であり、保障でもある。中国金融技術基準と決済革新はより多くの国・地域に恩恵をもたらし、『一帯一路』沿線地域で『空中決済ライン』をつくっている」と述べた。(c)Xinhua News/AFPBB News