【10月10日 AFP】家族、友人、地下鉄で乗り合わせた赤の他人、そして四六時中ニュースに出ている有名人まで、人が認識できる他人の顔は約5000に上るとする研究論文が10日、発表された。

 英ヨーク大学(University of York)の研究チームは、多忙な社会環境においても、人にはスマートフォンやテレビの画面で目にする数千という数の顔を処理できる認識能力があることが分かったとしている。

 ヨーク大学のロブ・ジェンキンズ(Rob Jenkins)氏(心理学)はAFPの取材に、「日常生活のなかで、われわれは友人や同僚、有名人、その他多くの他人を、顔によって特定することに慣れている」「だが、実際に何人の顔を見分けられるかについてはこれまで実証されていなかった」と話した。

 英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)」に発表された論文によると研究では、私生活のなかに存在する、顔を思い出せる人を書き出すよう、被験者に依頼した。

 次に、顔は知っているが個人的な知り合いではない人についても同じように書き出してもらった。

 さらに著名人の画像を数千枚見せ、どの顔を認識するかについても調べた。正確性を求め、著名人1人当たり画像は2枚ずつ用意した。

 その結果、それぞれの被験者が思い出した/認識した顔は約1000~1万に上った。ジェンキンズ氏は「人は平均して約5000人の顔を見分けることができる」と語り、「われわれは、数十人の顔を見分ける何らかのメンタルな機能を駆使し、数千人の顔も見分けているようだ」と続けた。

■識別の誤りについても理解深まるか

 今回の研究では、人が認識できる顔の数が初めて明らかになった。この研究結果については、空港や犯罪捜査で使われる機会が増えている顔認識ソフトウエアの開発にも役立つとチームは話す。

 他方で、顔の識別に誤りが生じる理由についても理解を深めることができるかもしれない。

 ジェンキンズ氏は、「なじみのない顔の識別と、なじみのある顔の識別との間の重要な違いについては、すでに心理学の研究で明らかにされている」ことを指摘しながら、「なじみのない顔は誤認することが多い。なじみのある顔はかなり確実に識別できるが、具体的にどのように識別しているのかはまだ分かっていない」と話した。 (c)AFP/ Patrick GALEY